【2024年1月24日】
和歌山県の日高郡日高川町にある道成寺に参拝。
この寺には、後に歌舞伎や能などの演目として有名な「安珍と清姫」の伝説があります。
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その昔。
熊野詣のため、奥州から旅してきた安珍という僧侶が紀伊国を訪れます。
いわゆる「イケメン僧侶」である安珍が一夜の宿を借りると、その宿の娘である清姫が彼に一目惚れ。
しつこく付きまとい、猛アタックを仕掛ける清姫に対し、煩悩を捨てた僧侶の身である安珍は困惑しながらも「熊野詣の帰り道に必ず立ち寄るので、それまで待っていて」と嘘をついて旅立ちます。
いくら待ち続けても、全く帰ってくる様子のない安珍。
ようやく嘘をつかれた事に気付き、弄ばれたと感じた清姫は、愛情の裏返しである怨念に狂い、安珍を執拗に追跡します。
愛憎に身を焦がし、遂には大蛇に身を変えた清姫に追い回された安珍が必死に逃げ込んだのが、こちらの道成寺。
寺の釣鐘を下ろしてもらい、その中に隠れた安珍でしたが、大蛇である清姫に鐘ごと巻きつかれ、そのまま焼き殺されてしまいます。
そして、思いを遂げた清姫も川に身を投げて自害。
現代風にまとめてしまえば「ストーカー殺人からの心中物語」といったところでしょうか。
もちろん寺院に伝わる伝説なので、そんな血生臭い物語では終わる訳がありません。
話には続きがあり、共に蛇の姿として転生した二人は、道成寺で供養された事で成仏する、ある意味ではハッピーエンド(?)の結末を迎えます。
道成寺の境内には、焼き殺された安珍と釣鐘を埋めたとされる「安珍塚」があります。
また、安珍が隠れ、蛇が巻き付いた釣鐘が置かれていた『鐘巻之跡』も。
初代の鐘が焼失した後、しばらく道成寺に釣鐘は置かれませんでした。
何度も新しい鐘を作ろうとしても、清姫の怨念のせいか、ことごとく失敗してしまいます。
「安珍と清姫」の伝説から400年が経過した南北朝時代になり、ようやく二代目の鐘が完成。
ところが、釣鐘の供養をしていたところに一人の白拍子が現れて舞を披露すると、鐘は落下。
白拍子は蛇に姿を変えて消え去ってしまいます。
その後、釣鐘は歪んだ音しか出なくなり、周囲には疫病が蔓延。
これは清姫の祟りだという事で、鐘は山奥に捨てられてしまいました。
そこから現在まで、道成寺に鐘は置かれていません。
ちなみに、山奥に捨てられた鐘は、戦国時代に豊臣秀吉が紀州攻めを行った際に発見され、戦利品の一つとして持ち去られました。
鐘を持ち去ったのは、漫画「センゴク」でも知られる仙石権兵衛だとされています。
その鐘は現在、京都の妙満寺に納められています。