次に降りたのは、隣駅の「道成寺」でした。
能や歌舞伎など古典芸能に興味がある方々には、有名な演目の舞台として知られている「道成寺」。
過去に何度も和歌山を訪れてきたのに未だ訪問した事が無く、ぜひ一度訪れてみたい寺院の一つでした。
駅から7、8分ほど歩いていくと、
仁王門へと繋がる石段がありました。
この道成寺には「七不思議」と呼ばれる謎があり、その一つが、こちらの石段の仕組み。
同じ長さのはずなのに、下から見上げると短く感じられ、上から見下ろすと長く感じます。
参拝者が少しでも階段の上り下りを楽に感じるための心配りなのですが、説明を聞いてしまえば簡単な話。
石段の両脇にある土手部分が、上に行くほど広くなる逆八の字になっていて、遠近法を上手く利用した造りになっています。
まあ、いくら短く感じられるとしても、実際の長さは変わらないので、上った時の疲労感は一緒ですけどね(笑)。
道明寺が開かれたのは、今から1320年ほど昔。
現在の和歌山県御坊市あたりに生まれた宮子姫ですが、全く髪が生えてこない娘でした。
その頃、地元は深刻な不漁に悩まされており、宮子姫の母親が原因を探るために海へと潜ってみると、海の底には光り輝く観音様が埋まっていました。
観音様を引き上げた母親が毎日熱心に拝んでいると、宮子姫に髪が生え始め、いつしか「かみなが姫」と呼ばれる美少女に育っていきます。
その噂を聞きつけた貴族の藤原不比等に養女として召し上げられ、藤原宮子として宮中に仕えるようになった宮子姫は、その美貌を見初められ、文武天皇の后となりました。
自分に黒髪を与えてくれた観音様に感謝する宮子姫のため、文武天皇は観音様を祀る道明寺を創建することにしました。
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和歌山県で現存する最も古い寺院とされる道明寺には、国宝や重要文化財に指定された建物や仏像、宝物などが数多く残されています。
こちらの仁王門も江戸時代に建てられたもので、国の重要文化財に指定されている貴重な門。
平成になってから色を塗り直しているので、あまり古さは感じられませんが、
両脇を固める仁王様は貫禄十分。
「道成寺の七不思議」は仁王門にもあって、
本堂と、その中央に祀られる千手観音。
仁王門。
石段と、その先の参道。
これらが全て、一直線上に並んでいます。
…それが「不思議」なのかどうかは意見の分かれるところですが(笑)、石段を上がり、門を潜り、本堂に参拝する参拝客を、真正面から観音様が見守り続けているという事ですね。
江戸時代。