【2024年1月24日】
 
和歌山県を走る紀州鉄道に乗り、「鉄道むすめ巡り2023」のデジタルスタンプを獲得した私は、御坊駅から再びJR紀勢本線に乗り換え。

 

 

次に降りたのは、隣駅の「道成寺」でした。

 

 

能や歌舞伎など古典芸能に興味がある方々には、有名な演目の舞台として知られている「道成寺」。

 

過去に何度も和歌山を訪れてきたのに未だ訪問した事が無く、ぜひ一度訪れてみたい寺院の一つでした。

 

駅から7、8分ほど歩いていくと、

 

 

仁王門へと繋がる石段がありました。

 

この道成寺には「七不思議」と呼ばれる謎があり、その一つが、こちらの石段の仕組み。

 

同じ長さのはずなのに、下から見上げると短く感じられ、上から見下ろすと長く感じます。

 

参拝者が少しでも階段の上り下りを楽に感じるための心配りなのですが、説明を聞いてしまえば簡単な話。

 

 

石段の両脇にある土手部分が、上に行くほど広くなる逆八の字になっていて、遠近法を上手く利用した造りになっています。

 

 

まあ、いくら短く感じられるとしても、実際の長さは変わらないので、上った時の疲労感は一緒ですけどね(笑)。

 

 

道明寺が開かれたのは、今から1320年ほど昔。

 

飛鳥時代の西暦701年、当時の文武天皇の勅願によって建てられました。
 

 

そして、この寺が建てられた背景には、天皇の后である藤原宮子の存在がありました。

 

 

現在の和歌山県御坊市あたりに生まれた宮子姫ですが、全く髪が生えてこない娘でした。

 

その頃、地元は深刻な不漁に悩まされており、宮子姫の母親が原因を探るために海へと潜ってみると、海の底には光り輝く観音様が埋まっていました。

 

観音様を引き上げた母親が毎日熱心に拝んでいると、宮子姫に髪が生え始め、いつしか「かみなが姫」と呼ばれる美少女に育っていきます。

 

その噂を聞きつけた貴族の藤原不比等に養女として召し上げられ、藤原宮子として宮中に仕えるようになった宮子姫は、その美貌を見初められ、文武天皇の后となりました。

 

自分に黒髪を与えてくれた観音様に感謝する宮子姫のため、文武天皇は観音様を祀る道明寺を創建することにしました。

 

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和歌山県で現存する最も古い寺院とされる道明寺には、国宝や重要文化財に指定された建物や仏像、宝物などが数多く残されています。

 

こちらの仁王門も江戸時代に建てられたもので、国の重要文化財に指定されている貴重な門。

 

 

平成になってから色を塗り直しているので、あまり古さは感じられませんが、

 

 

 

両脇を固める仁王様は貫禄十分。

 

「道成寺の七不思議」は仁王門にもあって、

 

 

本堂と、その中央に祀られる千手観音。

 

仁王門。

 

石段と、その先の参道。

 

これらが全て、一直線上に並んでいます。

 

…それが「不思議」なのかどうかは意見の分かれるところですが(笑)、石段を上がり、門を潜り、本堂に参拝する参拝客を、真正面から観音様が見守り続けているという事ですね。

 

 
現在の本堂は、現在から650年ほど前の南北朝時代に再建されたもので、国の重要文化財。
 
その本堂に祀られている千手観音像は奈良時代に彫られ、日本で一番、もしくは二番目に古い千手観音像とされています。
 
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境内に立つ三重塔は江戸時代に再建されたもので、県指定の重要文化財。
 

 

この三重塔にも「道成寺の七不思議」の一つがあります。
 
一層目と二層目の屋根が「平行垂木」で支えられている一方で、なぜか「扇垂木」という難しい工法で支えられてる三層目の屋根。
 

 

その理由として伝わっている逸話が…

 

江戸時代。

 
三重塔を建て直している途中、二層目までを完成させたところで休憩をしていた大工の棟梁に、一人の巡礼が話しかけます。
 
「扇垂木にした方が美しいぞ」
 
その言葉を信じ、三層目の屋根に扇垂木を使ってみたところ、確かに美しい仕上がりに。
 
素人に指摘された恥ずかしさと、それなら一層目と二層目も扇垂木にしておけば良かったという後悔に苛まれた棟梁は、塔を完成させた後、ノミを口にくわえて塔から飛び降り自殺してしまいました。
 
という伝説が残っています。
 
「七不思議」というよりも「七つのエピソード」といった方が良いかも。
 
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数多く残る文化財や、様々な伝説を聞くだけでも、十分に魅力的で見どころの多い道成寺。
 
しかし、この寺院で最も有名な伝説は「安珍と清姫」で間違いありません。
 
歌舞伎の演目である「娘道成寺」としても知られる物語に関しては、また次の記事にて。
 
(つづく)