(日光の旅(6)から続く)

 

 

陽明門に彫られた500ヵ所以上の彫刻のうち、人物は42ヵ所。

東西南北の四面に、中国の故事や伝説を基にした様々な彫刻があり、合計156人もの人物が彫られています。

 

 

正面(南側)には、

 

 

人物の彫刻が並ぶ列が2列。

 

上の列は、無邪気に遊ぶ子供達。

下の列は、大人達の「こうあるべき」という理想が表現されています。

 

 

子供たちが遊ぶ姿は、平和な世界を願い、表現したものと言われています。

古今東西、争いの犠牲になるのは弱い立場の者ですからね…。

 

その中に、中国の故事から引用した彫刻が一つ。

 

 

この「司馬温公甕割」と呼ばれるエピソード。

古代中国の儒学家だった司馬温公が子供の頃、、間違って大甕に落ちてしまった友人を助けるために、躊躇する事なく、高価な甕を叩き割った話から来ています。

どんなに高いモノでも、命の方が大事という、ごくごく当たり前の教えですね。

 

そんな子供達を守る大人達の理想的な生活を描いた彫刻が、下の列に並んでいます。

 

 

 

髪を洗っている政治家と、彼に対して何かを訴え出ている五人の人物たち。

 

政治家たるもの、たとえ髪を洗っている時でも民衆の声に耳を傾け、良い意見、優れた人物などを探す事を怠ってはならない、という教えですね。

 

 

古代中国の思想家・孔子が、弟子達と一緒に流れゆく川を眺め、

「逝く者は斯くの如きか昼夜をおかず」と感嘆した、という故事「孔子観河」。

 

「過ぎ去っていくものは、この川の流れのように、昼も夜も休まないんだなぁ~」

 

命に限りのある人間にとって、川の流れのように止まらず流れていく時間の中で、常に努力し、成長していかなければならない。

人生は儚いけれど、短い時間だからこそ努力は尊い、という事でしょうか。

 

古代中国において、文人が嗜むべき四つの技芸を描いているのが「琴棋書画」。

 

 

書物や絵画を楽しむ文人たち。

 

 

琴を奏でる文人。

 

 

そして、囲碁を打つ文人たち。

 

常に民衆の声に耳を傾けながら、自分の能力を磨き続け、子供達が自由に遊べるような平和な世の中を作っていく。

これが德川初代将軍だった家康公の理想であり、江戸幕府の歴代将軍へと引き継がれていく理念だったのかもしれませんね。

 

そして、もちろん現代の政治家にも引き継がれていくべき事でもあります。

 

 

(日光の旅(8)に続く)

 

 


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