私が定期購読しているWebマガジンであるJBPRESSに「歴史的偉業を成し遂げたトランプ大統領:大真面目な「トランプ称賛本」がNYタイムズのベストセラー」と題する記事が掲載されました(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56060)。
日本の新聞や報道のみで理解すると、トランプ大統領はトンデモリーダーで、米国だけでなく世界中が迷惑しているという感じですが、米国民からの一定の支持を受けていることを伝えるニュースがちらほらと伝わってきます。
NYタイムズなどは、反トランプの急先鋒とも言えるメディアなのですが、同誌で同大統領の功績を称える書籍がベストセラーとして紹介されるということで、感情論はさておき、同大統領の功罪を客観的に評価しようという動きが出てきたというところでしょうか。
ビクター・デイビス・ハンソン博士の"THE CASE for TRUMP"の中では、同大統領の功績を次のように紹介しています。
- トランプ・ドクトリンというものがあるとすれば、それは外交政策にしろ、国内政策にしろ、極めてシンプルだ
- エリートたちがこれまで『当たり前』と考え、手をつけようとしなかったアジェンダをトランプ氏は片っ端から『正常な状態』に戻そうとしたのだ
- イランとの核合意最終交渉、中東和平のカギとなっているパレスチナ問題、北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の通商・軍事問題、キューバ、ニカラグア、ベネズエラ問題、対EU問題、対NATO(北大西洋条約機構)貿易分担問題、ロシア問題など解決策が見つからないことばかりだった
- オバマ前大統領以下、エリートたちは『正常でない状態』が続いていることは認識しながらもそれを『仕方のない現実』と受け止めてきたのだ。そう『集団思考』(Groupthink)してきた
- トランプ大統領は、その『集団思考』から決別し、専門家たちが何と言おうとも無手勝流を貫いてきた
- トランプ大統領がイラン合意を一方的に破棄したのも、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と直接会って核・ミサイル放棄を直談判しようとしたのも(結果的には第2回米朝首脳会談以後、膠着状態に入ったが)、エリートたちの『集団思考』をぶち壊そうとするトランプ流だった
- 国内政策でも同じことが言える。米国内のエリートたちの間には『オールド・コンセンサス』がある
- 例えば平時では失業率は4%以下には下がらない、非白人少数民族の失業率は6%以下にはならない、国内総生産(GDP)は年率3%以上増えることはないなど
- ところがトランプ政権は過去2年の間にこれらの『オールド・コンセンサス』をすべてぶち壊している
要は、エリート層が「当然」「仕方ない」として、常識あるいは所与の前提とした扱ってきた多くの事柄をゼロベースで見直し、時には、挑戦してきたのが、トランプ大統領であったとする評価です。
当然のことながら、本書に対する反論は盛り上がっているようですが、政治的立場あるいは思想的に反対する場合であっても、きちんと反対側の言論を取り上げて、論理的に議論していく姿勢は、米国の民主主義がまだ健全に機能している面を見るようです。
日本のメディアは、相変わらず政治家の失言を取り上げて、「問題だ!」と声高らかに問題提起しますが、瞬間的な言動を取り上げることに血道を上げるよりも、その政治家が行っててきた政策や活動によって、国家や社会にどのような影響を及ぼしたのかを冷静に分析する方が重要ではないかと思ったりします。
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