「神話」をテーマにしたシンポジウムでスピーカーを務めることもあり、「神話」を起点に歴史・民族・文化・文明と掘り下げていっています。
正直言って、すごくしんどいです。
神話と歴史、民族、文化、文明がそれぞれに密接に絡み合うだけでなく、そこに「人間の営み」という視点を盛り込むと、例えば戦争や支配、差別に迫害と、人間が持つ醜い部分が見て取れてしまうから。
特に神話については、それを有する民族の人間観、自然観、死生観などのベースになっていることもあり、下手な触り方をすると、大火傷しそうな気がするので、聞き手をミスリードするような、危ういテーマにはなるべく近づかない(近づかせない)ような工夫を凝らそうとしています。
若かりし頃は、結構、「文明論」が好きで、A.トインビー『歴史の研究』やP.ケネディ『大国の興亡』、S.ハンチントン『文明の衝突』などを読んで、これらの著書の中で、日本文明が、他の文明と肩を並べて、文明としての存在感を出していることを無邪気に喜んでいました。
しかし、文明について理解を深めるほどに、文明って大変だなと感じるようになりました。
というのは、『ローマ帝国衰亡史』や『大英帝国衰亡史』、『中国の歴史』を読むと、文明には栄枯盛衰があることを知るわけです。
たとえ一時期覇権を握ったとしても、文明には消長があり、そこで一喜一憂しないといけないわけで。
塩野七生の「ローマ人の物語」を読んでいても、カエサルからアウグストゥス、そして、ティベリウス、それから五賢帝へというくらいまではローマ帝国の勢力が拡大し、多少の失敗も、国力の伸長でカバーされてしまいます。
が、これが五賢帝以後の時代になると、優秀な皇帝や指揮官が出てきても、坂道を転げ落ちるように、何もかも裏目に出て失敗してしまい、最終的に崩壊に至る、という過程を見せつけられます。
文明を学んで陰鬱な気持ちを味わうくらいであれば、軽やかに文化で遊んでしまう方が、精神的には健全かもしれないなと。
日本は文明を維持すべきなのか、それとも、文化で遊ぶべきなのか、自分の中でも色々な思考と葛藤が湧いています。
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