インフルエンザ発症から3日目。
体温は安定してきたものの、喉の痛みと頭痛が出てきました。
体内で抗体が頑張ってくれていると思うので、引き続き、安静しながら、栄養と休養を心掛けています。
体調が安定している時には、読書をということで、昔、購入して積ん読していた『ヤバい経済学』を手に取って、読み始めました。
『ヤバい経済学』という刺激的なタイトルとは異なり、経済学という学問ツールを使って、相関関係と因果関係とをごっちゃにした議論を行うことの「ヤバさ」を指摘した、意外に真面目な本。
そういう意味では、同書から10年後に発刊されている『「原因と結果」の経済学』と内容が似通っています。
この原因と結果の取り違いは、目的と手段の混同と同様に、政策の現場においても多々発生している現象であり、余計な労力と不要な混乱を招く根源なので、政策実務の現場にいる人間は、まずは押さえるべき基本的な論理的思考のひとつかと。
私が面白いなあと思ったのは、「第4章 犯罪はみんなどこへ消えた?」で、ニューヨーク市警による犯罪率低下を扱ったケース分析。
このケースについては、『ブルー・オーシャン戦略』において、同戦略の実行段階における組織面のハードルを乗り越えた事例としても紹介されています(同書第7章)。
ニューヨーク市警による犯罪率低下が実現したのは、ビル・ブラットンという人物が、ティッピング・ポイント・リーダーシップ(どのような組織でも、一定数を超える人々が信念を抱き、熱意を傾ければ、そのアイディアは大きな流行となって広がっていく)を巧みに駆使することで、組織面のハードルを超えるマネジメントを実現できたことを強調してします。
経営学者らしい戦略&組織マネジメントからのアプローチで理路整然としているのですが、これに対して、『ヤバい経済学』では、ニューヨーク市の画期的な取り締まり戦略が犯罪を劇的に減らしたわけではない反証として、1990年代を通じて、全米のどこでも同様に犯罪率が低下していたことを指摘します。
代わりに、1970年代に中絶が合法化されたことが原因で、望まれない子供の誕生が減少するとともに、それに合わせて貧困や片親による家庭環境で犯罪に走りやすい世代が1990年代には減少という結果をもたらしたと指摘しています。
両者とも様々なエビデンスやデータに基づいて、自己の主張を展開されているのでしょうから、私にとっては両者のロジックは正しい様に思います。
更に言えば、また違うエビデンスやデータに基づけば、これらとは全く異なる原因が浮上してくるかもしれません。
こうやって考えてみると、その道のプロフェッショナルが導き出した結論についても、これだけ意見が分かれるのだから、結局、政策には「正解はない」と言えるのではないでしょうか。
正しいか、間違っているかを悩むくらいであれば、ある程度合理性が立った時点で、まずは実行してみる。その上で、適宜仮説を修正しながら、最善の結論に至る道筋を考えていく方がゴールに近いような気がします。
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