「文化と地域」というテーマにおいて、その関係性を分析するためのツール(フレームワーク)がないのと同様に、「スポーツと地域」というテーマを分析するフレームワークを、残念ながら、現在の私は持ち得ません。

 

持ってないんだったら、持てるように専門書を読んで、まずは大要を理解しようというのが、私の行動パターン。

 

今回もそれに習って、昨日、購入した『スポーツの経済学』を読んでみました。

 

が、読み終わってみると、これは『スポーツの経済学』というよりは、『スポーツ経済論』だなと。

 

経済学と経済論との違いは、前者は様々な事例を踏まえて、それらを実証分析し、普遍的に見られる現象をモデルや数式で一般化して、多くの事例への適用可能な理論を構築することを目指していますが、後者は既存の理論やフレームワークを用いて、目の前にある現象を理解するための材料を提供するというもの。

 

なので、門外漢の私がスポーツビジネスを理解するという観点からは、決して無意味ではなく、有意義な情報もあったのですが、本書の主目的は、スポーツを経済(ビジネス)面から捉えた場合の可能性や、各スポーツ業界の経営実態=マネジメントを明らかにすることにあったため、無形財であるスポーツの効用を経済学のフレームワークでどのように分析するかという、私が文化経済学においても同様に抱えている問題意識に直接つながるヒントは得られませんでした。

 

本来、経済学は、価格や数量などの視認可能な指標によって測定をしたり、比較をしたりするなどの分析を積み重ねることで発展してきた学問なのですが、私が興味を持っている文化やスポーツについては、その測定や比較に関する有効な指標が十分に整備されてないため、客観性よりも、主観性が強くなりがちです。

 

そうなってくると、経済効果という、誰もが客観的かつ容易に判断できる視点が「強い情報」となり、それ以外の面でスポーツが果たす役割や意義であったりというのが軽視されがちです。

 

現在のスポーツ施設の問題、特にサッカースタジアムについては、スポーツ施設が持つべき「公共性」と、サッカーというスポーツの「経済性」、さらには、それらと密接な関係のある「地域性」という複数の要素が折り重なっていて、立場が変われば、重視する視点もそれぞれに変わってくるため、議論をしながらも、共通の土俵に上がってないかのような錯覚を覚えます。

 

門外漢である私は、それらの議論に一本の判断軸を通すことができればなという思いで、少しスポーツ経済学を専門的に学んでみようと思い、"The Economics of Sports" なる専門書を次に読んでみようと思います。

 

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