マネジメントの有名な言葉に、「組織は戦略に従う」(アルフレッド・チャンドラー)というものがあります。
まずは戦略を先に構築した上で、その戦略達成のために必要な組織体制を整えるべしという趣旨であり、ピーター・ドラッカーも次のように言っています。
「組織構造は組織が目的を達成するための手段である。組織構造に取り組むには目的と戦略から入らなければならない。
これこそ組織構造についてのもっとも実りある洞察である。」
これとは逆の考え方、すなわち、「戦略は組織に従う」(イゴール・アンゾフ)というものがありますが、これは経営資源に限界のある中小企業では、戦略実行に必要な組織体制を整えられず、組織体制がボトルネックになる、というものです。
私にとっては、両方とも真理のように思えているので、一方が正解で、他方が間違いというつもりは毛頭ありません。
ただ、戦略実行に必要な経営資源を組織から全て内部調達するという考え方自体が時代錯誤的に思えて、経営資源が不足しがちな中小企業であれば、ネットワークによるコラボレーションを通じた資源調達ということが可能(というよりは推進すべき)時代であるという認識に立っているので、その観点からは、私は、まず戦略ありきの「組織は戦略に従う」というスタンスを支持したいと思います。
なぜ、改めてこんなことを書くかと言えば、現在、相談を受けている(愚痴を聞いている)案件が複数あるのですが、課題解決に向けて、現状分析→課題抽出(設定)→方策検討というプロセスをすっ飛ばして、いきなり組織を作ろうというところから議論が始まっているんですよね。
要するに、「何か困ったことが起こった」→「では、まずは組織を作ろう!」という「パブロフの犬」(条件反射)状態なのです。
その組織で達成すべき目標や、取り組むべき戦略、あるいは、実行すべき戦術も皆無なので、いざ、組織を作っても、組織運営のための基本方針を回していくことにあたふたしていて、気が付けば、解決すべき課題が忘れ去られて、組織運営に汲々としていくという、悲惨な様相を呈しています。
私であれば、不確実性が高く、早急に課題解決に向けて動く必要があれば、意思決定の時間を最小化し、利害関係者との調整に時間が割けるよう、必要最小限のチームで動き始めます(場合によっては一人で)。
戦略に自信がある(プロジェクトの目的や目標、その実行や成果等について十分な説得力を持てる)のであれば、単騎駆けで戦場に臨む方が早いし、更に、その戦場での変化をとらえて、戦略の練り直しも迅速に行うことができて、結果として、勝機を見出す可能性は高くなります。
ところが、組織論者は、戦略に自信がないもんだから、単騎駆けのリスクを気にして、多くの兵隊を連れて物事に臨もうとして、結果として、兵隊の募集から訓練までに時間を費やし、やっとのことで戦場に辿り着いたら、既に戦争は敗北で終わっていた、ということも多々ありますよね。
結局、目の前で起こっている課題をどう捉えるのかという認識の問題のような気がします。
現場の課題は、現場で起こっているからこそ、そこにさっさとアプローチするために、そこに辿り着くための時間と労力を如何に最小化するのか、更には、現場の変化に柔軟に対応するため、戦略の変更要求の承認を、如何にスピーディに行えるようにするのか。
こういう視点で、組織体制のあり方を考えないと、「変化の激しい時代に対応する」なんていうお題目は空虚な意味しか持たないような気がします。
追伸:漫画『キングダム』の朱海平原の闘いにおける王翦と李牧の知略勝負が面白すぎて、本日の投稿は、ややその熱気に当てられております。
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