最近、私が講演の中でも、「観光客のために利便性を追求するというのは一見善なるように思えますが、実は、魅力なき街づくり・地域づくりにつながるリスクを常に念頭に置くべし」ということを注意喚起しています。

 

利便性の究極の姿が何かと言えばコンビニエンスストアだとは思うのですが、それが、今、どれくらい存在しているか御存知ですか?

 

(一社)日本フライチャンズチェーン協会の「JFAコンビニエンストア統計調査月報」によれば、2018年8月現在の総店舗数は55,483店舗。

 

日本の人口が約1億2千万人なので、1店舗当たりの想定利用者数は約2,150人となります。

 

そこで、私の自宅周辺にコンビニエンスストアがどれくらい存在するのか、なんと半径400m以内に10店舗近く存在しました。




 

半径400mと言えば、歩いて5分圏内。

 

その圏内に10店舗近くもコンビニエンスとある必要性も、必然性も全く感じません。

 

逆に言えば、コンビニエンスストアがあった場所に、かつては存在したはずの店や建物が消失することにより、地域性や独自性もなくなり、味も素っ気もない場所に変わってしまいます。

 

私自身は、世界43ヶ国を旅行したことがあり、特に、観光大国イタリアは毎年ないし2年に1回は訪れるようにしていますが、イタリアは観光客向けに利便性を追求しようとはしていません。

 

Wi-Fiを繋がらないところは多々あるし、コンビニエンスストアはない(代わりにタバッキという小規模雑貨店)し、観光地の交通インフラが不十分なところも多いけど、観光資源や地域に魅力があれば、どんなに不便であっても、観光客自身があらゆる手段を尽くすんですよね。

 

誰もが気軽に行ける場所ではないからこそ、訪問する価値が高まるし、稀少価値が高まれば、観光地としてのブランド力向上にもつながると思います。

 

こんなコンビニエンスストアだらけになったら、せっかく観光に訪れても、外食はせずに、コンビニエンスストアで弁当を買って部屋で食べようという気持ちにしかならないと思います。

 

もちろん悪いのはコンビニエンスストアではなく、飽くなき利便性を追求する我々のような消費者がいて、無数の人が、そのような購買行動を取っているからこそ、いまだにコンビニエンスストアは増え続けているわけです。

 

ここらで「利便性追求」という言葉が招く現実を冷静に見直す必要があるのではないでしょうか。