塩野七生が書いた『ローマ人の物語』は何度も読み返しているのですが、その中で、一度読んだきりで二度と読み返してない巻があります。

 

それが第10巻『全ての道はローマに通ず』です。

 

塩野は、その他の作品においても、ローマの土木技術の水準の高さ、そして、それを維持するための意識の高さを指摘しており、いわば、この10巻は、その集大成とも言うべき巻に当たります。

 

とはいえ、ずっぽり文系の私としては、土木技術のことを熱心に説明されても、あまり響くこともなく、一度読んで、すっかり満腹になりました。

 

ところが、改めて読み返してみようと思う事件がイタリアで発生しました。

 

それが、8月14日に起きたジェノバにあるモランディ橋の崩落事故で、少なくとも38人が亡くなった痛ましい事件です。

 

『The Economist』では、"It is not just in Italy that bridges are failing"(橋の危険はイタリアだけではない)(→https://www.economist.com/leaders/2018/08/18/it-is-not-just-in-italy-that-bridges-are-failing)と題する記事を掲載して、世界各地におけるインフラ劣化に警鐘を鳴らしています。

 

Bridges throughout Europe, America and Asia are all showing signs of deterioration. As long ago as 1999, one study showed that 30% of road bridges surveyed in Europe had some sort of defect, often involving corrosion of their reinforcement. And a report this year found that more than 54,000 out of the 613,000 bridges in America are rated “structurally deficient”. These dodgy bridges are crossed 174m times a day.

 

1999年に行われた研究によれば、欧州で調査した道路橋の30%に何らかの欠陥があり、その多くが鉄筋の腐食に関連したもののようです。

 

また、今年公表された報告では、米国にある約10%の橋が「構造上不完全」と評価されているにもかかわらず、毎日1億7400万台の車が渡っているという、驚きの報告もなされているようです。

 

日本のインフラも、高度経済成長期を中心に整備されたインフラが多く、コンクリート構造の建築物等は、そろそろ耐用年数が経過して、改修・補修が必要な更新期を一斉に迎えることになります。

 

人口減少、そして、財政余力の乏しい現状の中では、インフラ更新について真剣に考える時期であり、イタリアの事故からは汲み取るべき教訓が多々あると思います。