本日の南日本新聞で掲載されていた、かごしま水族館におけるインバウンドの取組。
今回のターゲットは上海の親子連れということでしたが、彼らがインバンド誘致に取り組み始めた10年前のスタートアップ時から関わってきているので、感無量の思いです。
当時、現地駐在であった私は、30代前半の若造であったにもかかわらず、とても生意気なことを言っていました。(←今更ですが反省してます)
鹿児島からやって来た観光セールス団の一員でもあった彼らに対して、「セールスツールや具体的プロモーションなど、何の事前準備もしないでやって来て、名刺交換をして、御飯を食べて『よろしくお願いします』と言って帰るだけなのであれば、現地旅行社の貴重な時間を奪うだけだから、さっさと帰ってくれ」と。
あれから10年ですが、私の苦言をものともせずに、「継続は力なり」という言葉どおりの結果を示してくれました。
時間をかけて地道な取組を進めた結果として、かごしま水族館を訪れる外国人観光客数は2012年度から2017年度の6年間で10倍近くになっているようです。
今回の上海からの親子連れに対する宿泊イベントについては、人数は30名と小規模ではあります。
しかし、子供の教育費に糸目を付けない中国人の親の気持ちをがっちり掴むとともに、今回の体験をした子供たちは、鹿児島観光のリピーターになってくれる可能性が極めて高いだけでなく、友人やその家族への口コミによって大きな反響となることが予想されます。
かつて上海やシンガポール、ヨーロッパ最大のオセアノグラフィック(スペイン)など世界各地の大規模水族館を視察していた私は、かごしま水族館のコンテンツではインバウンド誘客は難しいという判断を下していました。
けれども、そんな私の思い込みや偏見をを覆すようなアイディア・企画を、かごしま水族館は実現したと思っています。
持続する意思をもって、諦めることなく、マーケティング戦略を考え、不足するリソースを確保するための連携・協業を行い、受入体制を整備していけば、官だとか、民だとか関係なく、きちんと結果を出せる。
今回のかごしま水族館の取組の成功要因をバーニーのVRIO分析で評価してみると、競争優位を保てる条件を備えていたことが明らかです。
- Value(価値):上海の子供たちに対して、間近にジンベエザメを見ながら就寝するという得がたい経験を提供
- Rarity(希少性):日本での初めてとなる取組
- Imitability(模倣可能性):中規模の地方水族館という特性や長年にわたるインバウンド受入体制のノウハウの蓄積
- Organization:自社資源のみの自前主義ではなく、県内他社との連携・協業による体制整備
鹿児島企業らしいビジネスモデルを作り上げて、インバウンド誘客に取り組む企業が、かごしま水族館に続いて、次々に誕生することを期待しています。