およそ10年ぶりに読んでみる本書。
10年前に、地場産業論に関する論文を執筆していた際に、地場産業の未来には「デザイン」思考が不可欠であるという仮説を設定していました。
しかし、「デザイン」なる得体の知れない(抽象度の高い)概念を扱うには、経験不足、知識不足であり、本書に書かれたエッセンスの10分の1も理解できず、論文に取り込めていませんでした。
けれども、人生経験の積み重ねや知見の蓄積を繰り返してきたことにより、10年経って、本書を読み返してみると、デザインが実に幅広い分野に応用可能であることに気付きます。
例えば、関連性の高い分野を挙げてみると・・・
- シュンペーターのイノベーション論
- マーケティングにおけるコミュニケーション理論
- セーブル&ピオリの「柔軟な専門化」
- 編集工学
- ポーターの「国の競争優位」論
- 認知科学(行動経済学)
- 文化経済学
私が理解する範囲で、ざっと挙げただけで、これだけの分野と関連があるので、読み手の興味・関心次第では、多くの示唆が得られることと思います。
本書では第1章「デザインとは何か」で、デザインに関する歴史的経緯を振り返っていて、我々が直面している文明の有り様とは如何なるものかを歴史的視点に立って見ることを意識できました。
これは著書のスタイル(思考様式)とも深く結びついています。
現在という場所から半歩先の未来を見るのではなく、過去から現在、そして少し遠い未来を見通すような視点に立ちたい。未来が存在すると同時に莫大な文化的蓄積が過去にはあり、自分にとってはそれも未知なる資源である。
なお、本書の著者が書いた新書『日本のデザイン:美意識がつくる未来』もあるらしく、早速、G.W.の読書用として購入しました。
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