経済学を学んだことがある人間にとって、「マクロ経済政策」と言う言葉に馴染みはあっても、「ミクロ経済政策」という言葉は聞いたことがないと思います。

 

私が、この言葉を認識したのは、M.E.ポーターのクラスター理論に関する論文「クラスターと競争:企業、政府、産業にとっての新しい課題」を読んだときです。

 

従来の産業政策との相違点については、「産業政策が、特定の立地に有利なように競争を歪めることをめざすのに対して、クラスター理論は生産性とその成長を阻む制約を排除することに集中する。クラスター理論は、市場シェアよりもダイナミックな改善を重視する。」と説明されています。

 

産業クラスターを育成・発展させる上で、果たすべき政府の役割として、ポーターが強調しているのが「積極的かつ明確な長期的経済アクション・プログラムの開発と実施」です。

 

ポーターは、政府が経済開発の明確なビジョンをもって、「政府、企業、各種機関、市民が全般的なビジネス環境や国内のクラスターの配置を動かすプロセスを変えていく」べきと主張します。

 

そして、クラスターのグレードアップを行う場合には、「まずクラスターの存在を認識し、障害を排除し、制約を緩和し、クラスターの生産性やイノベーションを妨げている非効率性を撤廃することである。考えられるのは、人材やインフラや規制といった面での制約である。」として、政府が取り組むべき目標を掲げます。

 

私も、今、あるプラン作りに勤しんでいるところですが、「上からの」産業政策という発想ではなく、競争力のある産業クラスターの育成・発展という観点から、生産性向上・イノベーションのボトルネックとなっている課題のひとつひとつの検証から取り組んでいきたいと思います。

 

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