よく聞く話で「自分のような初心者が入ると、他のメンバーが嫌がるんじゃないかと思うと、セッションに参加することを躊躇してしまいます。」とおっしゃる人がいますよね。

気後れする理由として、一見、充分もっともに聞こえるのですが、誤解とも言えるし、とてももったいない考え方とも言えます。
誤解を解く意味で、嫌ではないという理由を書いてみましょう。

そもそも、セッションの目的とはなんでしょうか?初心者にとっては、セッションとは、乾坤一擲、伸るか反るかの大一番という感じのドキドキする発表の場であり、自分の音楽的成果を見極める目的で行うことが多いだろうことは、想像に難くありません。

しかし、上級者にとって、初心者の方も混じってのセッションは、そもそもそういう音楽的成果を求める場というよりは、コミュニケーションを楽しみに来たという感覚であることが多いと思います。つまり、楽しむこと、友達を増やすこと、そして初心者に対する啓発、この辺りが目的となるのです。

したがって、上級者と初心者のセッションにおける心理状態を「外国人バーに来ている」という設定で例えるなら、ジャズ上級者は外国人そのものであり、母国語でコミュニケーションをしたくて来店しているという感じ、それに対してジャズ初心者は外国語を勉強中の日本人、とにかく自分の英語が通じるか?という心境というところです。

さてここで、外国人は辿々しく話そうとしてくる日本人を「けっ、めんどくせーな〜。」と思うでしょうか?決してそんなことはないでしょう。一生懸命話そうとする日本人が、何を言わんとしているか聞き取ろうと努力し、何とか会話を成立させようとする場合がほとんどではないでしょうか?

ですから、セッションも状況は一緒で、決して上級者は初心者の参加を不快には思っていないのです。
上級者が音楽的成果を求めるなら、ライブであったりレコーディングであったり、しかるべき場所や人や環境をセッティングします。
セッションでは、その人自身もセッションそのものを楽しむ気持ちでいるだけなので、大いに利用して胸を借りればいいのです。

また上級者は、誰と演奏したとしても自分の演奏はできるし、達人級になると、そうした初心者の人にワンステージ上の経験をさせてあげる力量を持っています。
「ほら、これがジャズを演奏するということなんだよ」と、言葉によらず、演奏によって示してくれているのです。

ということはどういうことかというと、「緊張なんてしてる暇はない」ってことです(笑)。よく「あの人とやって緊張したー!」という人もいますが、緊張している暇があったら、その人の演奏を同じステージ上で注意深く聴き、それが全体にどんな作用を及ぼすかを全身を耳にして感じ取るようにしましょう!
そのためだったら、自分は1音も発しなくてもいいくらいです。
でも余裕があれば音を発してみて、その音を上級者がどんな風に包み込んでくれるか?それをやはり全身を耳にして味わってみるのです。

つまり上級者との共演とは、「自分が何かができることを証明する機会」ではなく、「上級者の演奏を同じステージで全身で受けとめる機会」です。そんな風に考えれば、逆に緊張も和らぐのではないでしょうか?
逆にそういう状況でシャカリキになって「僕って結構できる子でしょ?!」と演奏するのは、ある意味片腹痛い行為という場合もあります。

そういう意味では、初心者の方の態度があまりよろしくない場合は、上級者の態度も変わってくるでしょう。また中級者は、自分のことに精一杯なので、初心者の参入を嫌がる場合もあるかもしれません。
その辺は、まあ、色々とお互いに配慮や注意が必要になってくるでしょう。^_^;

なーんて長々と書いてしまって、初心者だ、中級者だ、上級者だ、と定義がはっきりしない上に、人を勝手に評価しているようで、あまり気持ちがよくない表現ではあります。
ただ分かりやすいように、イメージしやすいようにという気持ちで使ったまでで、他意はありませんので、悪しからずご了承ください。

とにかくセッションは、思いきって、純粋な気持ちを大事にして、気後れせずに、参加するようにしてください!