「霜焼はかゆい。だからポリポリ掻く。こりゃあ気持ちがいい。わしは徹夜で掻きつづけたこともあるぐらいだが、こんな楽しみを与えてくれるものが、ほかにあるかね」
「…」
「水虫はいっそう楽しい。足指の股のところが白くふやけ、やがて穴があく。その穴のまわりの皮を毟る。すると皮がポロポロ剥けてくる。あれはじつにいい気分のものだ。霜焼と水虫。このふたつがなくなったら、わしは寂しさのあまり死んでしまうだろうよ」
なんと甘美な表現だろう。
水虫になりたい。
百年戦争〈下〉 (講談社文庫)
「霜焼はかゆい。だからポリポリ掻く。こりゃあ気持ちがいい。わしは徹夜で掻きつづけたこともあるぐらいだが、こんな楽しみを与えてくれるものが、ほかにあるかね」
「…」
「水虫はいっそう楽しい。足指の股のところが白くふやけ、やがて穴があく。その穴のまわりの皮を毟る。すると皮がポロポロ剥けてくる。あれはじつにいい気分のものだ。霜焼と水虫。このふたつがなくなったら、わしは寂しさのあまり死んでしまうだろうよ」
なんと甘美な表現だろう。
水虫になりたい。
百年戦争〈下〉 (講談社文庫)