塩の街/有川 浩

¥1,680
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有川浩(アリカワ・ヒロ)と言えば『図書館戦争』なのですが、
ひねくれものの私は、それより既出のいわゆる自衛隊三部作から入りました。↑と『空の中』と『海の底』です。読了したよ。夏期休暇中ということもあって、集中読書期間です。徹夜しました。
つか、徹夜させられたんだよね。そんなわけで私的評価は☆★★★★。
ハードカバーだけど、角川さんのラノベ部門、電撃文庫から出ています。これが有川浩のデビュー作だそうです。すごいですね。ハードカバーは売れないって言われているのに出すか、角川。
あとがきによると、第10回電撃文庫大賞を受賞してしまったという『大人の事情』により、やむなく電撃文庫で先に出版されたそうです。そのためによりラノベらしくするため書き直しを迫られ、この単行本はその改訂版(作家の希望に戻した別名いいとこどり)になるそうです。
ちなみに『空の中』『海の底』はラノベ扱いされず。角川文庫から出ています。
実力者ですね。その後の売れ筋を見ても、相当の手練だと、言わずとも知れましょうけど。
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―――地球に飛来した『結晶』。ひとが塩の彫刻と化す『塩害』に侵されていく世界。
確かな明日が約束されなくなった世界で、ひとは何を想って生きるのだろう。
「わがままかもしれないけど、身勝手かもしれないけど――俺たちが恋人同士になるために、世界はこんな異変を起こしたんじゃないかって、そう思うんだよ」
「愛は世界なんか救わないよ。賭けてもいい。愛なんてね、関わった当事者しか救わないんだよ。救われるのは、当事者たちが取捨選択した結果の対象さ」
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あらすじは難しいので主要な台詞を抜き取ってみました。いい台詞だよね。でもしっかり全部読んだら、この台詞の重みは変わります。絶対、変わると思う。これはラノベではない、と角川の編集部が判断した理由もわかると思う。あまあまなんだけどね。でも重いんです。
作中(その後の世界を描いた短編にて)、主役の秋庭が、こんな台詞を吐いてます。
「人間、そんな立派で抽象的なお題目のために命なんか張れねえよ」
太平洋戦争で、戦場に散った命を思うとき、彼らが「天皇万歳」と叫びながら、内心は誰のこと考えていたのか思いを馳せたとき、行き着くのはここしかないわけで。
「君たちの恋は君たちを救う。僕らは君たちの恋に乗っかって余禄を与るだけさ」
と、ぬけぬけと言い放ったのは、なかなかの策士なのですが憎めないキャラで、この人が登場する後半からは、物語のカラーががらりと変わります。ただのあまあま路線ではなく、非常に現実的な判断を重ねた上での行動となっていて、面白いです。
政治謀略的な判断が、随所に出てくるところがね。ラノベとは思えない所以です。
ちなみに。徹夜させられたにもかかわらず★4つにしたのは、塩害発生後の社会について――地球規模で起きた災害であり、霞ヶ関の政府要人が半数に減ったのに、配給制度がすぐに整備され、それが数ヶ月ちゃんと続くことに対する違和感(ただし山間部など、人口非密集地では被害は少ないので、ライフラインが保たれる理由は納得。流通経由と金が問題)と、『塩害』原因の根拠が少し曖昧だったこと(実験の結果得た推測、としか書かれておらず、結果の内容は明かされていない。でもそれ以前に、伏線が大変しっかり張られているので、これは相殺すべきかも。……すべきだろうなあ。)、しかしそれがSFの難しさであり、物語の進行には不足はないと思えたので、この中途半端な評価になりました。
SFではなくファンタジーだと思って読めば、ひっかかりは全く感じないと思います。
とにかく、胸を張っておすすめ!です。
(電撃文庫版は未読なので、どっちがいい? とか聞かないで)
(単行本には「その後の世界」を描いた短編4編が収録されています。本編と短編4編が、大体同じ厚みです。登場人物の年齢とか、最終章の戦闘シーンとか、大幅な改訂やざっくり削除がなされているらしいので、お小遣いに余裕がある人は、両方買って読み比べるのもいいと思います。)

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有川浩(アリカワ・ヒロ)と言えば『図書館戦争』なのですが、
ひねくれものの私は、それより既出のいわゆる自衛隊三部作から入りました。↑と『空の中』と『海の底』です。読了したよ。夏期休暇中ということもあって、集中読書期間です。徹夜しました。
つか、徹夜させられたんだよね。そんなわけで私的評価は☆★★★★。
ハードカバーだけど、角川さんのラノベ部門、電撃文庫から出ています。これが有川浩のデビュー作だそうです。すごいですね。ハードカバーは売れないって言われているのに出すか、角川。
あとがきによると、第10回電撃文庫大賞を受賞してしまったという『大人の事情』により、やむなく電撃文庫で先に出版されたそうです。そのためによりラノベらしくするため書き直しを迫られ、この単行本はその改訂版(作家の希望に戻した別名いいとこどり)になるそうです。
ちなみに『空の中』『海の底』はラノベ扱いされず。角川文庫から出ています。
実力者ですね。その後の売れ筋を見ても、相当の手練だと、言わずとも知れましょうけど。
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―――地球に飛来した『結晶』。ひとが塩の彫刻と化す『塩害』に侵されていく世界。
確かな明日が約束されなくなった世界で、ひとは何を想って生きるのだろう。
「わがままかもしれないけど、身勝手かもしれないけど――俺たちが恋人同士になるために、世界はこんな異変を起こしたんじゃないかって、そう思うんだよ」
「愛は世界なんか救わないよ。賭けてもいい。愛なんてね、関わった当事者しか救わないんだよ。救われるのは、当事者たちが取捨選択した結果の対象さ」
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あらすじは難しいので主要な台詞を抜き取ってみました。いい台詞だよね。でもしっかり全部読んだら、この台詞の重みは変わります。絶対、変わると思う。これはラノベではない、と角川の編集部が判断した理由もわかると思う。あまあまなんだけどね。でも重いんです。
作中(その後の世界を描いた短編にて)、主役の秋庭が、こんな台詞を吐いてます。
「人間、そんな立派で抽象的なお題目のために命なんか張れねえよ」
太平洋戦争で、戦場に散った命を思うとき、彼らが「天皇万歳」と叫びながら、内心は誰のこと考えていたのか思いを馳せたとき、行き着くのはここしかないわけで。
「君たちの恋は君たちを救う。僕らは君たちの恋に乗っかって余禄を与るだけさ」
と、ぬけぬけと言い放ったのは、なかなかの策士なのですが憎めないキャラで、この人が登場する後半からは、物語のカラーががらりと変わります。ただのあまあま路線ではなく、非常に現実的な判断を重ねた上での行動となっていて、面白いです。
政治謀略的な判断が、随所に出てくるところがね。ラノベとは思えない所以です。
ちなみに。徹夜させられたにもかかわらず★4つにしたのは、塩害発生後の社会について――地球規模で起きた災害であり、霞ヶ関の政府要人が半数に減ったのに、配給制度がすぐに整備され、それが数ヶ月ちゃんと続くことに対する違和感(ただし山間部など、人口非密集地では被害は少ないので、ライフラインが保たれる理由は納得。流通経由と金が問題)と、『塩害』原因の根拠が少し曖昧だったこと(実験の結果得た推測、としか書かれておらず、結果の内容は明かされていない。でもそれ以前に、伏線が大変しっかり張られているので、これは相殺すべきかも。……すべきだろうなあ。)、しかしそれがSFの難しさであり、物語の進行には不足はないと思えたので、この中途半端な評価になりました。
SFではなくファンタジーだと思って読めば、ひっかかりは全く感じないと思います。
とにかく、胸を張っておすすめ!です。
(電撃文庫版は未読なので、どっちがいい? とか聞かないで)
(単行本には「その後の世界」を描いた短編4編が収録されています。本編と短編4編が、大体同じ厚みです。登場人物の年齢とか、最終章の戦闘シーンとか、大幅な改訂やざっくり削除がなされているらしいので、お小遣いに余裕がある人は、両方買って読み比べるのもいいと思います。)