入社早々、挨拶もそこそこに吉原部長に車で連れて行かれたのは、神戸市西区にある老人ホームでした。吉原部長は奄美大島出身で色黒で白髪頭、話すと純朴な感じで優しい人柄でした。後に、一家で夜逃げをすることになるのですが、原因は奥さんが入れ込んだ新興宗教に喜捨する為に作った多額の借財のせいで、厳しくなる取り立てから逃げるために障害を持つ娘さんを連れて、忽然と一家まるごと消えてしまいました。ある日、吉原部長が無断欠勤をし、不審に思った社長が、僕に吉原部長の家に様子を見に行くように命じました。垂水区塩屋町にある一軒家を訪ねると、人気はなく呼び鈴を押しても誰も出てきません。試しにドアノブを握ると、苦もなくドアは開きました。声を掛けても反応はなく、良くないとは思いつつ勝手に中に上がり込みました。台所もリビングもついさっきまで誰かがいたという強い気配が感じられました。まるで神隠しにあったみたいに、その日を境に吉原部長は姿を消しました。
で、話は戻ります。