どうしても触れたくない (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 26)/ヨネダ コウ

EVに二日酔い状態で乗り合せるというロマンの欠片もない出会い方をした外川と嶋。
「顔で採ってんのかと思った」
「・・・ヤな奴」
課長の外川は無口で表情の乏しい嶋に何かにつけて構ってくるが、
嶋は酒、とくにビールが苦手でタバコも嫌い。出会いが出会いだったこともあり
嶋にとっては当初は外川は"仕事の上で仕方なく"レベルの位置づけだったようなもの。
入社してしばらくして、ある時
外川の同期の小野田の発言で
自分が無意識に外川を意識し始めてきていることを知る。
嶋にとって、その"無意識"は一番気づいてはならないものだった。
"それ"が前の職場を辞めることになった理由だったからだ。
ヨネダコウさんの商業誌を買ったのは初めてだったので分厚さがまず新鮮でした!(え)
ストーリーとっても良かったのであれやこれやセリフについてもちょこちょこ書いているので結構ネタバレ感あるかもしれません。すいません;
ヤマシタトモコさんのマンガは言葉による演出がもの凄いというのが私の印象なんですが、
反対にヨネダコウさんは絵の表現(特に表情)と余白(空間)の演出が凄いなと思う作家さんです。
同人誌でも、時折ギャグをまじえつつも非常に静謐な雰囲気を醸し出す漫画を描かれる方だなという印象を持っていました。
個人的な話になりますが、遊郭を題材にした本を出されたときは見開きでの映像描写が凄く素敵だな~と思いました。
リボーンというジャンルに関して言えば他サークルさんでも読んで泣いた経験がありますが、ヨネダコウさんのマンガでは相当に泣かせていただきました。
それこそ最近オリジナルBL漫画を(再び)読むようになったもので、初めてその存在を知った当初に受けたイメージと比べて、
最近は本当に「普通ではない」ことで好きになった対象がたとえ自分を好きになってくれたとしても「将来的にその人の未来をダメにしてしまう」といったような相手を想う気持ちで悩める普通の男性が主人公になっていて、それがとてもいいなあと思います。
「限りがある」ということをファンタジーの世界の住民である彼等自身が語っているところがまた、切なくなりますね。
CDが出るよという今になって買ってしまったものだから漫画をよみつつも脳内でキャストがしゃべっている妄想が膨らんでえらい状態になってしまって(笑)
また、冒頭書きましたが、見どころは表情ですね。
出てくる人の人情がにじみ出ている感じがします。小野田さんとか。出番こそ少ないですけれど。
またね、この表情が・・・ほんとにエロいんですよ!
あと『BLコミック 恋する言葉。Perfect Bible』のインタビューでおっしゃっていましたが
「腕と三角筋」の描写にも注目です!
自称「二の腕フェチ」な私個人としても要チェックポイントであります(笑)
あと、会話のない間の処理ですね。
映画「スカイ・クロラ」でこの台詞がない部分の演出に凄く力を入れていたと特集番組の中でいっていたのですが、
台詞こそないんですけど、ほんとうにちょっとした仕草ですね。手の指のわずかな動き、目の動きとか。
あと「コップを置く音」ひとつをとってもものすごくこだわって作ってありましたよね。
「椅子のきしむ音」とかもいいな~と思いました。とくに小野田さんから嶋君の前の会社での出来事を聞いたあと、外川が椅子に座って煙草吸っているシーン。
私的に印象に残った言葉は
「俺のお前を好きな気持ちまで踏みにじる権利はない」(外川)
ですね。こんなに想ってくれるって凄いなと思いますね。
小野田さんが実は意外と意地悪なとこもあっていいなぁー。
"まだ"血迷っていない小野田さんはそのあとどうなったのかな(笑
キーワードとしてもラストの季節も「雪」の季節だったので
なんとなくeufoniusの「アネモイ」をリピート再生しながら読破しました。
CDでのBGMがどうなっているのかも気になりますね~。