同時化学放射線療法(以下CCRT)を受けている間に起こりうる副作用の予防のため、
私が試したことを書こうと思う。
CCRTは
骨盤領域に照射する放射線治療を平日毎日、それに
週1回のシスプラチンという点滴の抗がん剤を併用する
スケジュールで行っていく治療。
考えられる副作用は、頻度が高いものから低いものまで色々ある。
私は、がん治療や緩和医療を医師として患者さんに行ってきた経験から、副作用がどんなにか辛いもので、それにより治療がうまくいかなくなることもあることを知っていたし、それを予防したり早期に対処することで救われる患者さんも診てきた。
そういった経験から、副作用について
とにかく、できることは全てやっておきたい気持ちがあった。
それに、
今まで患者さんに勧めてきたことを実際に経験できるのは、貴重なこと。自分でちゃんと試してみたいという気持ちも少なからずあった。
やってみたら、意外に大変!ってことも
あるかもしれない。
患者さんって、細かいこと(から大事なことまで)をなかなか医師に言えなかったりするのも、
自分が癌になる経験を通して痛いほど知ったからである。
というわけで、
起こる可能性はそんなに高くないとしても、少しでも可能性が
ある副作用についてはできる範囲で予防策を取ろうと考え、準備した。
予防策として必ずしもエビデンスレベルとして高くないものも含むが、
安価で
副作用がほとんどない
という基準は設けた。
まずは口内炎について。
今までの人生で、口内炎は数度経験がある。
ただ1、2箇所あるだけだったが、それでも食事やおしゃべりが辛くなった。
ところが、がん患者さんの治療でできる口内炎はこの比ではない。本当に何も食べられないし辛そうなのである。
食べられないことで体力も低下してしまう。
メンタル的にも体調的にも治療を順調に進めるには、口内炎の予防策は必須だ。
まずは、口腔内を清潔に保つことが大事だ。
入院前に、かかりつけの歯科に行って、虫歯チェックとクリーニングをしてもらった。
歯科の先生曰く、クリーニングは抗がん剤治療の1週間前くらいがベストタイミングだそうだ。
それから、歯磨きは一日4回に増やした。
朝、昼、夜、寝る前の4回。
元々は一日2回しかしてなかった…
歯磨きの後はクチュクチュうがい。(のどのガラガラうがいではなくて)
化学療法専門医の先生に勧められた
バトラーのマウスコンディショナーを使用した。
自作した生理食塩水でもいいらしい。
ただ、入院中に生理食塩水を自作するのは現実的ではないと考え、こちらを利用した。
こちらは、口の中を保湿してくれる効果があり、がん治療中の乾燥しやすい口腔環境に潤いを与えてくれる。
20秒間クチュクチュ。
うがい後にほのかにミントの味が口腔内に残る。
これが、食欲不振や吐き気が出てきた時、少しだけハードルになったが、我慢して続けられるレベルだった。
もう1つ試したのは、
漢方の’半夏瀉心湯’によるうがいだ。
これは、口内炎ができてからでもよかったかもしれないが、
予防としても効果があるのでやっておいた。
やり方は食事後に、
お湯50mlに1包2.5gを溶かして、これを口に含んで口腔の粘膜に付着するようにクチュクチュとし、
その後30分間飲食せずに口腔内に薬を浸透させる。
そのあと上述の歯磨き。
これの欠点は、ペッとすると洗面台が茶色に汚れることだ。
水で流せばすぐ取れるが、なるだけペッとするのを排水口の近くでそっとするなど工夫した。
あと、独特な味と匂いが体調によってはキツイ。
途中で吐き気と食欲不振が出てきてからは続けられなくなったので休止した。
口内炎が実際にできてしまったら、再開していたと思う。
うがいだけで使用した場合には、体内に吸収されないため漢方自体による副作用リスクを低減できる。
また、この半夏瀉心湯という漢方はうがい以外にも、抗がん剤で起こりやすい下痢などにも効果があるので、がん治療では役に立つ漢方と思う。
幸い、CCRT終了まで、口内炎はできずに済んだ。