夢:僕は夜の駐車場を歩いている。砂利とアスファルトの入り混じる地面のところどころに水たまりがある。雨上がりらしい。ふと足元に冷たさを感じ、見下ろすと履いていた筈の靴が見当たらない。どこかで脱げてしまったらしい。僕は靴を探して駐車場を歩き回る。靴が見つかった。
12/31 3:23

辺りには街灯がひとつもない。空には星がひとつもない。雲もない。僕は「広さ」の概念を忘れ、ただ歩き回っていた。見つかった靴は、なぜかあの黒いサンダルだった。濡れた靴下が気持ち悪く、土踏まずにへばり付いていた。
12/31 3:42

昔の夢:夜遅くに街で何かが起ったらしい。夜だというのに僕はクラスメイトと先生とともに行動している。青黒い街の輪郭に、遠くから拍子木のような警戒音が入り混じる。やがて一行は西洋風の墓地に着く。女の子が一人、墓地内の十字架の前に立つ。踵を揃え、背中を縦木に、両腕を横木に密着させる。
12/31 3:53

先生は僕らに向けて何やら促している。女の子はぴったりと十字架に密着した。十字架の横木の高さは、誂えたように少女の腕と一致した。と、少女の前面の地面に別の十字架が浮き上がった。大きさは元々あった十字架にひとしく、かつ直角を成していた。そしてその角を回転軸としていきなり跳ね上がった。
12/31 4:07

扇形の軌跡を描いて、二枚の十字架はぴたりと重なった。少女は二枚の十字架に挟まれる形となった。惨劇の筈だが、潰れた血肉が飛び散る演出などはなかった。そのまま消えてしまった。一体化した十字架だけが後に残された。
12/31 4:28

先生によれば、これから起る事態への備えとして、彼女をああすることが必要であったらしい。それは犠牲であったのかすら分からなかった。ともかく、タイムリミットまでに備えはできたのだ。僕は青黒い街のシルエットにおののき続けていた。ほかの皆は墓地の通路をいそいそと移動していた。
12/31 4:39

昔の夢:僕は夜道を歩いている。傍らに誰かいる。弟だったと思うが確証はない。現実世界にある、酒屋から玩具屋までの道と、駅から曾祖父の家に至る道を混合したような狭い砂利道。道は僅かに上り坂になっていて、その周りに何があるのかは全く見えない。ただなんとなく、道の右側はブドウ畑に思えた。
12/31 4:47

恐怖を堪えながら歩いてゆくと、遠くに女の影が見える。「母だ!」と思って駆け寄ると、全然違う女で、牛蛙のような百貫デブだった。頬も腹も突き出ていて、肌は深緑で、目はタイ米のように細長く、またひどい垂れ目だった。僕らに向かってその女は何か言葉を発した。内容不明、声は野太く醜くかった。
12/31 4:56

僕らはその女から逃げる。女は追っては来ない。そのまま夜道を歩き続ける。夜気が身にしみる。更に先へ進むと、また女の影が見える。「今度こそ母だ!」と思って駆け寄ると、今度の女は顔こそ母であるものの、蛙と同じ姿勢で道に座っており、両手足も蛙と同じ形状だった。嫌な薄ら笑いを浮かべていた。
12/31 5:02

その蛙女は、母と同じ声で「げろげろ、げろげろ」と鳴いた。僕は脱力して、へたばった。もうどうにもならない。そこで目が覚めた。
12/31 5:04

昔の夢:森の中を少年が疾駆している。どんな姿かは分からないが、輪郭だけが辛うじて森の色から浮き上がって見える。最初まっすぐに走っていた少年は、体を大きく左に傾けて左折した。彼は何者かの期待を受けて、何か儀式の為に走っているらしい。曲がるとき、彼の輪郭がニュウッと斜めに伸びた。
12/31 5:09

場面替わって、僕が行為主となる。僕は生家の前の道(に似た道)の左端に佇んでいる。その道の右側を、黒い衣を纏った人の列が通ってゆく。ときどき台車を引きながら(押しながら?)通る人もいて、車輪がガラガラと鳴る。誰の顔も見えない。誰も言葉を発しない。
12/31 5:17

人々の列は、棺桶こそ見当たらないが、死者の弔いに違いなかった。そして僕は、彼らの影響で自分がうちに帰れなくなったことを知った。
12/31 5:18

うちに帰る為にはどうすればいいのか?僕は或るオッサンと相談していた。オッサンは髭と胸毛が濃く、どこかの窓枠に肘を乗せ、身を乗り出していた。そのオッサンと窓枠の前にいつの間にか自分は立っていたのだ。オッサン僕に指示して曰く、向こうに積んである××をこっちへ持って来い、と。
12/31 5:24

オッサンが持って来いと指示した××は、ラーメン屋の製麺箱に似た平べったい箱だった。中身は知らない。ともかくそれを向こうからオッサンの窓の下に運ばねばならない。僕は運んだ。1個、2個、3個、4個……と運んだところで、その箱の本来の持ち主が現れ、僕とオッサンを咎めた。
12/31 5:27

そこで目が覚めた。オッサンがどういうやって僕を帰そうとしていたのかは分からなかった。僕を騙して盗みを働かせたかっただけなのかも知れない。ところで、オッサンは窓枠に凭れていたと思うのだが、露天に浴槽を持ち出して泡風呂に浸かり、浴槽の縁に肘を掛けていたような気もする。昔なので曖昧だ。
12/31 5:32