面白い。それは否定しない。
しかし、吉川英治の三国志は、散々三国志にのめり込んでから読むと、
がっかりしてしまうだろう。
「何故、彼の如く浅い内容の本が名作と呼ばれるのか」と。
それは仕方が無いと言えば仕方が無い。二十世紀半ばに書かれた作品なのだから。
対中関係は最悪であり、ろくな資料が無かったのであろう。
その代わり、シナリオの構成は流石、と言う感じがする。武将たちの魂が読む者に伝わってくる。
資料不足による問題はまだ許せる。しかし、許せぬこともある。
その最も怪しからぬ点は、孔明が死んだ後の三国のことを、きちんと描いていない点である。
それまで劉備を善玉、曹操を悪玉とする勧善懲悪の形に捕らわれず、人物の像が壮大に描かれていたのに、
何故だか最後は孔明が消えて滅びる蜀漢を描きたくないかのような、うやむやな終わり方なのだ。
それなら、孔明が死んだ時点で筆を置けば良かった。
しかし、孔明が死んだ後、英治は「孔明が死んだ後は書いても面白くない」とか、
孔明に対する弔辞をあれこれ述べて文章を必要以上に長引かせているのである。
三国志は「平家物語」などと同じく、敗者を中心に描く判官贔屓の物語である。
その完成に必要な、「滅びの姿」を彼が書き切れなかったことが残念でならない。
しかし、吉川英治の三国志は、散々三国志にのめり込んでから読むと、
がっかりしてしまうだろう。
「何故、彼の如く浅い内容の本が名作と呼ばれるのか」と。
それは仕方が無いと言えば仕方が無い。二十世紀半ばに書かれた作品なのだから。
対中関係は最悪であり、ろくな資料が無かったのであろう。
その代わり、シナリオの構成は流石、と言う感じがする。武将たちの魂が読む者に伝わってくる。
資料不足による問題はまだ許せる。しかし、許せぬこともある。
その最も怪しからぬ点は、孔明が死んだ後の三国のことを、きちんと描いていない点である。
それまで劉備を善玉、曹操を悪玉とする勧善懲悪の形に捕らわれず、人物の像が壮大に描かれていたのに、
何故だか最後は孔明が消えて滅びる蜀漢を描きたくないかのような、うやむやな終わり方なのだ。
それなら、孔明が死んだ時点で筆を置けば良かった。
しかし、孔明が死んだ後、英治は「孔明が死んだ後は書いても面白くない」とか、
孔明に対する弔辞をあれこれ述べて文章を必要以上に長引かせているのである。
三国志は「平家物語」などと同じく、敗者を中心に描く判官贔屓の物語である。
その完成に必要な、「滅びの姿」を彼が書き切れなかったことが残念でならない。
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