初めて安吾に幻滅した。
徴兵されずに済んだブルジョアが何を抜かすか、といった感じである。
この短文を収録してくれた新潮文庫の編集部には、大いに感謝したい。

然り、残酷なのは戦争自体だ。

だが大きな前提として、私は自国の兵をできるだけ失わぬようにして他国を倒さねばならないと思う。
死ぬために戦うのではなくて、生き残るために戦うのである。

生き残ろうと尽くしたのに力及ばずして死ぬことはあるだろう。

だが、「最初から特攻専門の組織をつくる」となると話が変わってくる。
生き残れるものなら生き残る、という基本方針は崩してはならないと思う。

初めっから100%死ぬと分かっていて死にに行く。

これがジリ貧ゆえの"本来の意図ではない"最後の手段だというなら分かる。現実の特攻隊はこれであった。

然し安吾の言っているのは「"最初から"特攻に特化した戦法を取るべきだった」という話である。

これは絶対におかしい。いかに戦争自体が残酷であろうとも、生き残ることを念頭に置かねば仕方がなかろう。

最初から特攻しか手立てのない戦争なんぞを企てるくらいなら、そこまでに知恵が足りないというなら、

さっさと敵国の軍門に下ってしまうのが賢かろう。



上で挙げた箇所以外は良いと思う。特攻隊、および生き残った人々への真心が感じられた。

徴兵適齢期の男性に特に読んで欲しい。

堕落論 (新潮文庫)/坂口 安吾
¥540
Amazon.co.jp