>私は議論をして、勝ったためしが無い。必ず負けるのである。相手の確信の強さ、自己肯定のすさまじさに圧倒せられるのである。そうして私は沈黙する。しか し、だんだん考えてみると、相手の身勝手に気がつき、ただこっちばかりが悪いのではないのが確信せられて来るのだが、いちど言い負けたくせに、またしつこ く戦闘開始するのも陰惨だし、それに私には言い争いはなぐり 合いと同じくらいにいつまでも不快な憎しみとして残るので、怒りにふるえながらも笑い、沈黙し、それから、いろいろさまざま考え、ついヤケ酒という事にな るのである。

一般的な太宰ファンの好む「道化」という感覚はよく分からんのだが、上の一節には心底共感させて頂いた。