Amazonに掲載していたレビューを書き改めることにしたので、
もともとのレビューをこちらのブログに転載することにしました。
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成瀬の乳房をいじらせて貰っていただけの大津が、
なぜか自分と成瀬が結婚を前提とした関係になっていたと錯覚し、
それを親に報告までしていた点はやや頓珍漢に思え、
作者の意図しなかったであろう面白さを感じた。


まあ、上はどうでも良い話である。本題に入ると、

大津が「玉ねぎ」に仕えようとする理由づけは良いと思ったが、
わざわざカトリックのカテゴリに留まろうとする理由が不明瞭だった。

大津がカトリックであることについては、

「大津の母がそうであり、家庭がそうであったから」という以上の説明はなされない。
西洋のキリスト教が自分に合わないなら、それは良い。けれど、どうしてカトリックなのか。
どうして強引にカトリックの職である「神父」を志望し、
挙句インドで死体を運ぶ破目になる必要があるのか。
教義が気に食わないなら儀礼だけ採用して、自分流の信仰を作っても良かったのではないか。

正統のカトリックでなければ「玉ねぎ」を信じられないという理屈はない。

しかし大津のしたことは「カトリック=玉ねぎ」という思想を、
無意識のうちに頑なに貫くことであったと思う。
もしかしたら、作者の持つ「キリスト教=カトリック」という意識の表れなのかもしれない。
この点はやや排他的に思われた。キリスト教はカトリックのみではない。
汎神論者が個人的にカトリックの儀礼を採用して信仰するのはダメなのか。


総じて★は三つとしたい。

作者が真顔で書いてくれた綺麗事は、読むと心洗われるが、
筋書きとしてはやや中途半端な感じがした。
最後のほうでお説教の垂れ流しになってしまった感もある。
磯辺の結末を説明した箇所などは、完璧にお説教一色であり、現実感に乏しかった。

そして筋書きには関係ないが、三條夫妻は何らかの罰を受けるべきであった。

ウザいキャラクターには罰を与えて欲しかった。胸糞が悪い。

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