PRESIDENT Online スペシャル 掲載
■相手の魅力を使って話をさらにおもしろく
相手から話題やキーワードを引き出すことから、その場の話をさらにおもしろくする人たちがいる。人気司会者やインタビュアーはその名手といえるだろう。先日うかがった阿川佐和子*1)さんと茂木健一郎さん*2)の対談も、お二人の掛け合いと引き出し合う情報がうまく解け合って、相乗効果でおもしろくなるそのものだった。
阿川さんが、ときにおしゃべり風な会話に茂木さんをのせたり、質問を投げたりしながら、実験や専門的データを引き出していく。お二人ともお話上手で興味深いけれど、今回は阿川さんの巧みな話術から、私たちが「相手の力を引き出して、自分の話をさらにおもしろくする」方法を考えさせていただこう。
阿川さん自身の伝え方には、実際に会った人とのエピソードなどふんだんな実体験を自分なりに咀嚼して、データではない、情景が浮かぶような表現を使うことが多くみられる。それに対しておしゃべり風に返したくなるのもポイントのひとつ。また、「コミュニケーション能力とは発信力である」といった風潮が強い中で、相手の持っている発信力を引き出し、ついでにその力をテコのように使ってグイと自分の話をおもしろくしつつ、説得力を持たせるところにも特徴があるようだ。
どのように人から話を引き出すのか、また、どんな風に咀嚼してエピソードを伝えていたかを拝見していこう。
■新鮮で価値ある情報はどこに隠れているか
相手から話を引き出すときに大切にしていることについて、こんなお話をされていた。
「相手は生もので動いているのに、固定された情報にしばられると、せっかくのいいお話を聞き逃してしまうことがあるんです。だから、持っている情報に縛られずに生の話を聞いて、きっかけとなる言葉を見つけることが大切」
目標にした内容しか耳に入らなければ、せっかくその場で生まれた新鮮で価値のある情報を自ら捨ててしまうことになる。だから、持っている情報やあらかじめ聞こうとしていた内容はいったん脇において、今流れている話の中で「それはどういうこと?」とキーワードのしっぽを捕まえては引きずりだすことで、細部を突きつめていく。
阿川さんは特有のおしゃべり風伝達術でこんなピソードを話されていた。
「児童文学者の松岡京子さんにお会いして最近の子供の読書について聞いてみると、読書量が減っていることが問題ではなく、忙しすぎて本を読んだ後に考える時間がないことが問題だとおっしゃっていました。昔の子供はすることがないから、絵本を読んだ後にその本について『ああでもない、こうでもない』と頭の中でグジュグジュと反芻する。そのうちに物語と別の引き出しが頭の中にできて、それが感性の宝になっていくんですね。でも今は、本を読んだら次は塾、という風に時間がない。それが問題だと」
たとえば“読書量が減っている”ことが今回のヒアリングの目的だったとしても、それ以上に価値のある話を相手がポロッとこぼすかもしれない。一番の要となる“読書後の時間の大切さ”という情報の価値に気づき、「それはなぜか?」と“素朴な質問”をぶつけてみる。これで、「読書量よりも読書後に内容を味わい考える時間の不足の懸念」という作家さんが一番伝えたかったことが引き出せるだろう。
ポイントは先入観にとらわれすぎず、ぜひともつかんでおきたい情報の糸口を見逃さずに、そこからズルズルと情報を引きずり出すこと。すると、思いがけない情報の宝を掘り当てられるというわけだ。
さて、阿川さんはこうして経験の中から話をしたところで、相手の力を自分の話の中でテコのように利用する術を登場させた。
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