前々回、ゲランの香水の話を書きました。

香水に凝るきっかけは、吉祥寺東急のゲランのコスメカウンターだったということも。

 

 

口紅を一本買ったところで、メイクアップアーティストのデモンストレーションの予約を勧められました。

当日、ともだちと二人でいそいそどきどきしながらいってみると。

 

 

そこには徳永英明に似た、かりっと細身の男性メイクアップアーティストT先生がいました。

にこりともしない、ほどではなかったけれど、かなり素っ気ない感じ。

メイク前に肌を整えているとき、これまであんまりメイクしてこなかったんですよ、と自ら申告しました。

とくにこの10年は妊娠、出産、育児だったので、とエクスキューズ。

 

 

T先生はわたしのおでこのあたりにメイク下地を伸ばしながら、

 

「それは暗黒時代でしたね」

 

とあっさりいうのでした。

 

 

暗黒時代...

語感もイメージも真っ暗...

 

 

ほんとにそうだったなあ。

時間にも気力体力にも余裕がなくて、日焼け止めを塗るのがせいいっぱい。

色物なんてつけられなかった。

 

 

でも、気持ちがあれば、余裕がなくてもできるもの。

いいわけだったんだよね。

暗黒時代に逃げ込んでいたんだな。

 

 

メイクが進んでいくあいだ、反省しきり。

自分に申し訳なかったとも思いました。

 

 

T先生は、たんたんと黙々と仕上げていきます。

終わって手鏡を渡されて、

 

「ちょっと上から見てみてください」

 

といわれてそのようにしたら、そこにはピンクゴールドのオーラをまとった上品な若マダムが!

どこがどうしてそうなったのかはわかりません。

ただただ、品があって、知性もあって、清楚でもある、最高バージョンのわたしがいたのです。

 

 

「T先生、凄い!!」

思わず叫ぶと、T先生は初めてにっこりしました。

「お似合いですね」と。

 

 

そのときに使った色物を少しずつ買い揃えて、ピンクゴールドの上品メイクを習得していきました。

メイクが大好きになり、スキンケアとともに大研究。

10年間の暗黒時代を取り戻すため、41歳からの再出発でした。

 

 

数年後、新宿伊勢丹のコスメ売り場を歩いていたら、T先生がCHANELのカウンターのほとりに立っているではありませんか。

またも思わず叫びました。

 

「T先生!!」

 

わたしのことを覚えていてくれました。

そのときはすでにCHANELの口紅をつけていたので、その色をつけるなら、とチークを選んでくれました。

以来数年間、ともだちや母まで連れていき、T先生にメイクしてもらって楽しい時間を過ごしたのです。

 

 

あるとき「T先生に暗黒時代でしたねっていわれたおかげでメイクが好きになりました」というと、

「僕、そんなこといったんですか」と驚き「当時はまだショウのメイクからゲランに入ったばかりで、お客さんに失礼なこといってしまってたんですね、すみませんでした」と恐縮されました。

 

 

T先生の職人気質と男っぽさとどこかお坊っちゃまな育ちのいい感じのファンでした。

いまは美容機器のメーカーに転職して、メイクからは離れてしまったそうです。

残念だなあ。

 

 

じつは、転職後に立川伊勢丹のコスメフロアでデモンストレーションをしていたT先生を、またわたしが偶然通りかかって見つけたのです。

メイクの恩人であるT先生とのご縁を感じないではいられませんでした。

 

 

彼のメイクを通して学んだのは、男性の憧れは清楚さに極まる、ということです。

そして何歳であっても、どんなシチュエーションにおいても、清楚さはオールマイティ。

八千草薫さんのイメージ、といったらわかりやすいでしょうか。

 

 

この春はピンクゴールドのメイクをまたしてみようかな。

 

 

 

 

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第3回 800字エッセイの添削・講評

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