レフが行方不明になってからもう数週間以上が立っていた。
最近では、とある噂が立っているようで、昨今様々発生している問題は彼女のせいだといううわさが。
..ところで、あの計画はどうなりましたか? 「いや、まだです。」 「なら、この計画を発動させておいて、時間はないんですから。」 「はい...」 「じゃよろしくお願いします。」
そういった直後、顔を隠して部屋を出た。周りに目はないか、周りに誰かが見ているか。 いない。 ならばこの隙に。
風の音が一つ二つとなった後、 わずかに重苦しい金属の匂いを残しながら、何もないかのよう姿影まったく見えずに消えた。 その音は、弾丸よりも素早いものであったのは言葉にする必要もないと思った。
さすがに、身を隠さない弾丸はここまで遅いことはないだろうし。身を隠す最後の弾丸、あるいは引き金という定めは残酷なものだと、よく私も理解はしているが。
そう思いながら、狭いダクトを速い速度で移動する。正直体が痛くなるほどには早く。
何を急いでいるかは知らないが。
数分ほどかけて 自分の部屋についた。正直この移動を繰り返すのはストレスである上に、とてもめんどい、たまには愚者として彷徨い続ける手法をとるべきかなと思ったりもした。
部屋は相変わらずの暗がり夜間で、真っ暗。自分の腕の光沢程度ですら、まったく色を持たないほどには暗い。けれども別にそれでもかまわない、ただ私は、本能的に光を追い求めてしまうので、とりあえず明かりをつけた。
私はその光を受けてより強く輝く。ただそれは、上辺だけのシンプルな色。
比較的にピンク色とか、そんな色をメインにした部屋だけど、てーぶるは全く整備できてない。女性の一人暮らしというよりかは、お伽噺の国の少女が住まう小さな、夢の町のよう。ただし、その部屋の中にいる人は全くの例外で無限の可能性を秘めた金属の体を持つ主人公ではない少女だけれど。
とりあえず、おなかがすいたなぁ。と思ったので、てーぶるの上においてた雑なメモ帳の中にあった大切なレシピの料理を作ってみることにした。
材料は、足りてるから大丈夫そう。
問題は..最近カップラーメンばっかり食いすぎていて、体にとても悪いから、早くまともな料理を食べてくれとレフィアに言われたけど。あの子も私と似たような肉体を持ってるけど、全然違うと思う。ただ、たまには懐かしい料理を作るのもよいと思った。多分数年ぶりだけど。
とりあえず、牛脂を一個ほどフライパンに放り投げた。ぶっきらぼうだが、これくらいのテンションで料理はしたほうがいいと昔に聞いた。
そのあと賞味期限ぎりぎりのパンの耳詰め合わせを砕いて砕いてオーブンに投入。 その間にある程度猪の肉を切っておこう。
相棒のナイフちゃんには、かなり感謝してる。常に持ち合わせているので、使い方はもう慣れっこ。シュッシュッと切りつければ一瞬で綺麗に切れるほどには優秀な子だからね。
懐かしい気持ちになる、両親と初めて作った料理は...
総思い出に更けてるうちに、チーンと音がした。オーブンの音だ。すごい熱いけど素手で持っても全然問題ないから、そのままパンを砕いたのをボウルに入れ卵と混ぜて謎の揚げ物粉的なものを作ってみた。
ここにきて、急に米が欲しくなってきた、冷凍のやつを探してみたが、やっぱり最近はカップ麺ばっかりで、全然ない。 仕方がないので、炊けるのを待つ必要がありそう。
米を随分前に手に入れた巨大な鍋に入れて水を入れる、ドバドバと入れず、あえてちびちびと、この瞬間がかなり神経を使う。でも、金属に神経とかあるのかはわからないけど。あと、アクセントが欲しいので鰹節で取っただしをちょっとだけを足しておいた。炊飯器なんて便利なものは使わな過ぎて壊れたので仕方がなーい。
さて両方のガスを全開にして片方には鍋を、もう片方には大きな厚底鍋、鍋ばっかりと少しだけ笑っちゃった。そして片方の鍋に油を注ぎまくる。安心してほしい、オリーブオイルだから。 んで、ついさっき作った謎の粉の中に猪の肉を飽きるほど落とす。 そして油の海に落とす。 勢いの良い油の声が聞こえる。 この音は過去両親が作ってくれた料理の記憶と、苦いあの記憶を思い出す。
..もっと私が人らしかった時の話。
私には普通に両親がいた、とても料理が上手で、優しい人が。母が料理人で、父はキャンプが大好きだった。
今何をしているのか、生きているのかも、何もわからないけど、ただ恋しいな。私を人間として見てくれる人だろうと思うし、それは今までもこれからもずっと、そうだと信じている。せめて、大好きといいたかった。 でも運命は残酷だった、それに気づくのは、残酷な運命に巻き込まれて、私が変わってしまう前には気づかなかった。なんで別れたかといえば、火に町が消えた秋の夜まで続いた戦いのせいだ、どれだけ消えたのだろうか。
もはやその戦いは、何もかもを巻き込んで、しまった。 常に鉄塊の咆哮が鳴り響き、それが人を貫き赤い花が咲き乱れた。彼岸花のような血の花が。 最も食欲をそそらない記憶だが、思い出してしまう。
あの頃には、子供は研究のために拉致られ、あるいは自ら志願して薬品の海に飛び込むか消えるか。大人は戦いに出向き彼岸花を咲かしてしまうし自分が彼岸花にすらなる、人がものになる瞬間を何度も見た、私とは違って、本当の物となる。誰も人間の扱いではない、奴隷ということばを焼き付けるのすら悍ましい戦いだった。今思えば、私の運命はかなり残酷なものだったのか。
揚げ上がる音とは反対にいやなものを追憶させてしまった。 ただ嫌の一言で片づけることは許されない、それが私の受け入れるべきことだから。 ふと思ってみると、自分で料理をすることを多少忌避していたのは、この記憶と向き合うのが嫌だったからなのかもしれないなとわずかに思った。
さて、そんな気持ちは、宇宙の果てにでも置いて、油の音を見極めよう。
繊細な音の一つ一つ、それを噛みしめて。 ここだぁぁッ!
...最高の火の通りだ。それでも、少しは焦げてしまったが。
勿論米もしっかり見守っている。米は、極限まで硬さと柔らかさの究極の比を突き通せ、それが父からの教えだった。一人娘に対しての、この世で聞いたことがないほどには、奇妙な名言だ。彼は私を知り尽くしていたようで、柔らかすぎると、私の硬い身体にはあんまりにイージーモード。ただ硬いと私としては好みじゃあない。 欲張りな奴だ。
音は美しく、美麗なもの、熱も肌身に感じる。その感覚に酔っちゃいそう。 そしてその感覚が僅かに変化した、この特異点。
これが、究極の状態!! 一秒も無駄にすることないよう、よーし!いけたぁあ!
油断するなよ、ソレが冷めてしまう時間が迫っていることも。
お椀はどこいった?棚にない、これはまずい。そういえばこの前割っちゃったっけ。じゃあもう鍋からいただいちゃおう。
カツにキャベツは今はいらないだろう。そーすでもかけて、米の上に乗せた。
では、いただきまーす!
...うまい、両親の作った味を思い出す。 音の一つ一つが生きてる、意思がある、そう感じるように、非常に生命的にすら感じる、咀嚼音が誰もいない部屋を響く。私を人として加算するなら、私だけの部屋ならと。
米も、ちょうどいい硬さだ、決して柔らかすぎない、父が食べさせてくれた米に比べるとまだまだなのだが。
でも、私にしてはかなりいい感じの料理ができた、両親の作ってくれた料理のレシピを残しておいた、昔の私と、この料理をたくさん作って、そして食べさせてくれた両親のおかげ。
カツはわずかに独特な風味と、ソースのちょうどいい混じり合い。パンの耳をあっためて砕いたのは正解だったともいえるほど粗削りな、粉もいい味となっている。
ザクザク、ザクザク。ちょっと熱くなったなと思って、息を吐く。その息は、金属の姿からは想像できないほどには、あったかく生命的な温度を強く持っていた。 後で、水でも飲まないとな。
ひと段落ついたころ、メッセージアプリに4件のメッセージが。 そのうち2つが、スパムメッセージだったのは言っておくが、残りの二つは、私が大切にしてる、隠密部隊の後輩からの特訓について。もう一人は、いい加減まともな飯を食べているのかを訪ねるスパムメッセージと大差がない、おせっかいな少女のメッセージだ。
おせっかいな少女のメッセージを無視して、隠密部隊からの後輩からの連絡に目を当てる。 どうやら訓練をしてほしいらしい、できる限り早くやってほしいという。
今日は疲れたからねよう、話は明日から。そう伝えて、私は寝間着に着替えた。
こうして、今日も金属の塊となった少女は、暗闇と同化し、夢へとおぼれていった。