リトゥンアフターワーズコレクション2012S/S秘密のファッションショーとは何だったのかWrittenafterwards 000th collection 2012S / S Secret Fashion Show and the party, Neverland2011/2012年秋冬東京コレクション


ファッションジャーナリスト樋口真一あなたの知らないパリコレクションCollectionholic Paris Tokyo and
ファッションジャーナリスト樋口真一あなたの知らないパリコレクションパリコレ、東京コレクション、JFWの秘密
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リトゥンアフターワーズコレクション2012S/S秘密のファッションショーからまもなく1ヶ月。
コレクションの内容についてはパーティーについてのブログでも書きましたし、すでに各メディアで報道されているので、今回はコレクション?というよりもリトゥンアフターワーズの実験についての個人的な感想を書いてみます。


まず、結論としてはおもしろい試みだったと思います。最近、アンリアレイジは東京コレクションのシュルレアリスト、リトゥンアフターワーズはコンセプチュアルアーティストあるいはトリックスターととらえていますが、実にリトゥンアフターワーズらしかったと思います。始まる前も、見ている間も、終わってからも考えさせてくれるようなコレクションはほとんどありませんから。年間100以上のコレクションを見ても、デザインとアイテムを羅列するしか書きようのない、翌日には忘れてしまうようなコレクションがほとんどであることを考えれば、ある意味、それだけでも成功といえるかもしれません。


ここで、本当に何も知らない人のために、今回のコレクションのさわりをひとことで言えば、当日来場した観客の中から、抽選で選ばれた人が、そうだとは知らされないまま、ステージを歩かされる、それをファッションショーにしてしまった、つまり、通常のコレクション、ファッションショーのように、デザイナーがデザインした新しい服を見せるのではなく、抽選でたまたま選ばれた人が着ている服が次のファッションであるということです。


手法はアート、現代アート、コンセプチュアルアートと同じ。すごく単純にたとえるなら、トイレを芸術にしたマルセルデュシャンの泉といえばわかりやすいでしょうか。デュシャンの泉も、作品を自分で作らずにレディメイドつまり既製のどこにでもあるものを置いただけでアートですというもの(本当はこんなに単純ではありません。ここではたとえとして挙げています)ですが、今回のコレクションにも神様の付けていた十字架型のニットのふんどしと会場にあったニットの旗しか服あるいはアパレルの商品になりそうなものは出てきません。コレクションではなく、コンセプチュアルアートあるいはコンセプチュアルコレクションといえるかもしれません。


アートの手法、あまりにもストレートで概念的なコレクション。しかも、服がない、新しいデザインの提案がないという今回のコレクションにはすごいと思う反面、素直な疑問も浮かびます。賛否両論は当然でしょう。

禁じ手、パンドラの箱を開けてしまったな、という見方もできます。先日のシュルレアリスム展では箱に古い何かのかけらの入ったガラス瓶を入れ、博物館と書いた作品があったと思いますが、額縁と鏡を組み合わせて肖像画というタイトルを付けるアート作品のような表現は、アートの文脈から離れれば、意味のわからないものであり、人によっては、「大イタチ」が見られると思って村祭りの見世物小屋に入ったら、大きな板に血と書いてあったという笑い話と同じ。インチキと思うでしょう。


しかし、プロのコレクションという歴史の中で見れば、おそらく世界で初めての試みだと思います。今回のファッションショーの表現についてはコロンブスの卵ともいえます。わかってしまえば簡単、でも誰もやらなかった。裸の王様かもしれません。服としての提案がないという部分は「非絵画」を目指す作品を「これは絵ではありません」というようなものです。
マックイーンとガリアーノ以降に対するデザイナーの回答、ブロガーが海外のコレクションの最前列に座り、コレクションよりもストリートスナップがファッションの主役となる状況に対する皮肉かもしれません。


問題はこれから。
パンドラの箱を開けた後、王様は裸だと言ってしまった後にどうするのか。同じことは通用しません。


そして、もっとも重要なことは、今回の試みが他のデザイナーやファッションにどう影響していくのかということでしょう。デュシャンの泉が評価されるのは、作品そのものの評価に加えて、キャンベルスープの缶をアートにしたアンディウォーホールなどのポップアートの登場にまで影響力を与え、美術の文脈と歴史を変えるきっかけとなったことにあります。



今回の実験は他のデザイナーのコレクションや演出、専門学校の学生のデザインに影響を与えることができるでしょうか。あるいは、マルタンマルジェラのように、引退後にさらに評価が高まるでしょうか。もし、単純に無視されるのなら、自身が裸の王様になってしまいます。



その意味では東京ではなく、アートの展覧会としてでもなく(アートとしてとらえるなら新しくはありませんから)、パリコレクションで、何も言わずにこのショーをするべきだったのかもしれません。ブレスのようなプレゼンテーションという名目や、パリコレクション初日の夜、ヨウジヤマモトの後で今回の秘密のパーティーを開催してもよかったでしょう。

今回の儀式は多くの人に伝えられ、誰かに影響を与えて、本当の意味を持つものだからです。



あるいは、今回のコンセプトや実験の内容や映像を海外での展覧会やプレゼンテーション、インターネットを通じて、どんな形にせよ、世界に発信する計画があるのでしょうか。


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