3・11東日本大震災直後の22日、表参道Rinでエトヴァス・ボネゲがあえてコレクションを決行して、すでに2週間。延期となっていたコレクションのスケジュールを発表するブランドも増えています。しかし、ここで気になるのが計画停電の中で、電力を使わない、という言葉です。昔、行われていたという、金比羅歌舞伎、あるいは、かつてのマルタンマルジェラやアキラナカのようにという言い方のほうがわかりやすいかもしれませんが、照明をほとんど使わないコレクションを行うようなブランドがなければいいのですが。


時間がほとんどない中で行われたエトヴァス・ボネゲのコレクションと開催した勇気を評価し、演出、会場なども含めて、あの時点ではあの方法しかなかったのだろうと理解した上で、あえて書きますが、照明をぎりぎりまで落としたコレクションでは服のディテールや素材がほとんど見えません。見えているのは1列目、あるいは2列目までだと思います。


震災のことを考えていると言うのなら、午前中から夕方までに自然光の入る会場でコレクションを開催すればいいでしょうし、屋外でもいい。マダムグレをはじめとする以前のオートクチュールのように音楽なし、映像なし、演出なしでも問題ありません。むしろ、服を見るということだけを考えればその方がいいという言い方もできます。


ソマルタの選んだカラートはもちろん、東京国際フォーラムの1階、モーダポリティカ、屋外も含めると六本木ミッドタウンや国立競技場の屋外、上野の東京国立博物館法隆寺宝物館など、会場とスケジュール調整という問題はあるにしても、使えそうな場所はたくさんあります。ジャニーズがチャリティイベントを開催した代々木第一体育館前やその周辺もいいかもしれませんし、極端に言えば上野の公園や明治神宮周辺でもいい。


会場調整についてはJFWや新人育成に関わっている経済産業省や東京都もバックアップするべきでしょう。


また、コレクションのやり方や会場、安全性そのものを見直す時期に来ていると言えるのかもしれません。過剰な反応はするべきではないでしょうし、パリコレクションのように消防法うんぬんで入場を制限するのも行き過ぎだとは思いますが、震災のことを考え、電力を使わないコレクションをと言い、照明を暗くしながら、一方で通常のコレクション終了後にさえ延々と外に出ることもできないような狭い会場やエレベーター以外に移動手段のない会場を使うのではブラックジョークといわれても仕方ありませんし、来シーズンから何事もなかったかのようなライティングに戻っているのでは意味がありませんから。