この英文記事を日本語に訳してみました。
http://www.newscientist.com/article/dn23368-china-bird-flu-may-be-two-mutations-from-a-pandemic.html

中国の鳥インフルエンザはパンデミックまであと2つの変異を残すだけ?

 

l  H7N9H5N1が哺乳類の間で感染するのに必要と考えられる5つの変異のうち、3つをすでに獲得している。

l  その5つの変異がHN9に対しても同じ事をするかどうか、誰も確かなことは言えないが、それらの変異のいくつかが過去に3つの鳥インフルエンザをパンデミックに導いたことは分っている。

l  発病者と接触のあった人々を調べている中国当局は、ヒトヒト間で広まっているという確証はまだ何もないと言っている。

l  最も近年にパンデミックを起こしたウィルスは鳥インフルエンザと人間のインフルエンザのハイブリッドタイプであったため、比較的症状は緩いものだった。というのは、哺乳類のインフルエンザは鳥インフルエンザよりも人に対して重症化しないからだ。

l  H5N1H7N9などの純粋な鳥インフルエンザはより危険性をはらんでいる。

l  1918年に起きた、私たちの知っている最も致死的なパンデミックは純粋な鳥インフルエンザであり、人間の間の感染を可能にする変異を獲得していた。

l  ウィルス学者たちはH7N9が、同じことをするのではないかと恐れている。

l  H7N9は、肺の深部での感染を促進する突然変異を得ている点で、異常に深刻である可能性がある。それはH5N1、1918年のインフルエンザ、2009年のパンデミックでの重症なケースでも同じだった。

l  しかし、わかっているH7N92つの事例では軽い症状しか示していないので、中国当局は、報告されていない軽症なケースがどのくらいあるかと、それにより全体の感染者数がどれくらいかを推測するため、このウィルスがどんな頻度で人々を重症化させるかについて調べている。

l  H5N1に関して言えば、近年鳥の間で広く拡散しているにも拘わらず、哺乳類間で確実に広まる能力に至るまでは進化していない。

l  フォウチャーの実験では(バイオテロリストにH5N1のパンデミックを許す恐れがあるため下火になったが)、基本的に、病原性を全く失うことなくフェレットの間で感染したことを示している。

l  拡散可能なH5N1を作り出すのに、フォウチャーは最初に鳥インフルエンザを哺乳類に適応させると知られている3つの変異を前もって与えなければならず、次に、ヘレットが感染している間に、他の不可欠な変異を少なくとも二つ以上得るように進化させる必要があった。

l  故意に与えた3つの変異のうちの二つは、H5H2H3の鳥インフルエンザのHAタンパク質を哺乳類の鼻の細胞に吸着させることができるようにするものである。

l  これはH2H3の鳥インフルエンザが1957年と1968年にパンデミックを引き起こした原因となったものである。

l  1918年に起きたパンデミックのウィルスは、H1ファミリーのものだったが、同じ効果をもたらした似通った変異であった。

l  このような吸着のための変異は、自然界に存在するH5N1ウィルスには決して見られないものだが、H7N9はすでにその2つの変異のうちの一つを獲得しており、フォウチャーのフェレットでの実験においてそうだったように、哺乳類へのより強い適応能力を持っている可能性がある。

l  我々は、それがH7N9でも同様の効果を示すかどうかについて確証を持つには至っていませんが、研究者たちはその実験を急いでいるところです。

l  もし、我々が他のインフルエンザでのこれらの変異について知っていることがこのウィルスでも当てはまるとしたら、それは既に道半ばまで来ていることを意味しており、それこそが皆が心配している理由です。

l  H7N9ウィルスはフォウチャーがフェレットで行った実験でH5N1に故意に与えたもう一つの変異を持っている。それはポリマレーゼタンパク質分子の遺伝子配列の変化である。

l  ポリマレーゼ酵素は、ウィルスをコピーする役目を持っているが、鳥インフルエンザにおいては一段と強力であり、それが哺乳類の中で強い病原性を示す理由の一部になっており、また、この変異は、哺乳類の体温においてウィルスが活動することを可能にしている。すべてのパンデミックウィルスはこの変異を持っている。

l  H7N9はもう一つのフォウチャーが与えた変異を持っています。それはウィルスがフェレットに感染する時に起こるものです。それはHAから糖を取り去ります。

l  これで、H7N9ウィルスがフォウチャーの全ての5つの変異を得るまでに、あと二つのHAにおける変異を残すのみです。このウィルスが人間にたどり着く道筋は、フェレットの実験と比較できます・・・その実験では、フェレットにおけるたった4回の連続的な感染でH5N1は完全な伝染力を獲得したのです。

l  「全てのパンデミックウィルスはこの(哺乳類の細胞への)吸着とポリマレーゼ活動を獲得している」とフォウチャーは言います。「H7N9はこれらの性質を持っている。よって問題は、ほかに何が必要だろうか-あるとすれば?」

3/14に福島第一原発で起きた3号機の爆発については、政府・東電が1号機と同じ水素爆発と説明している他、アーニー・ガンダーセン氏は、核燃料プールの即発臨界爆発説を唱えている。しかし、ここに独自の深い分析から、また別の説を唱える人がいる。アメリカのIan Goddard(イアン・ゴッダード)氏だ。彼は、メルトスルーした燃料が格納容器の底に溜まった冷却水に触れて水蒸気爆発がまず起き、それによって格納容器内とアッパーデッキに溜まっていた水素の水素爆発が誘発されたのだと言う。元英文記事はこちら⇒ http://lewrockwell.com/orig4/goddard2.1.1.html
 原文を読んでその説得力の高い分析に驚き、これは是非、日本語にして多くの人に読んで欲しいと思い頑張って全文を一気に翻訳して見た。












福島第一原発 3号機:水蒸気爆発理論


by Ian Goddard (Translated by farposting)





福島第一原発、メルトダウンの特徴的な出来事は、314日に起きた、巨大なきのこ状の雲を発生させた3号機での爆発でした。 対照的に、1号機の爆発は、目立った垂直方向への爆発は見られませんでした。しかしそれでも、東京電力は、そのどちらも原子炉の最上階で起きた、水素爆発であったと仮定しています。しかし、劇的に異なる結果は、異なる原因を示しているはずです。


そこで、私達は、3号機の爆発は、注水された海水を大量に気化させ、2次的な水素爆発を連続的に引き起こした水蒸気爆発であったとする、証拠に基づくを提唱します。


Unit 1 vs Unit 3


図1:1号機は3号機の爆発で見られたような垂直方向のきのこ雲は見られなかった。よって、3号機では、何らかの特別な現象が起きたと考えられる。茸状の雲は、大量の気化した水と一致する大きさで構成されている。





森山氏の論文が言及している通り、原子炉を覆う格納容器内におけるメルトダウンの過程で起きる水蒸気爆発の危険性は、非常に大きな懸念と研究の対象でした。


熱せられた核燃料と冷却水が接触することで起こる水蒸気爆発は、軽水炉のシビアアクシデントの最中の格納容器の健全性に対して起こり得る脅威の一つとして、また、初期の大きな放射性物質の放出の発生頻度評価の不確実性を示す重要な根拠として、実際に認識されていました。





3号機には、メルトダウンの最中に冷却目的で海水が注水されていたので、水蒸気爆発に必要な材料は爆発前の格納容器に存在していました。よって、水蒸気爆発がそのような環境下で認識されていたリスクであることを考慮すれば、水蒸気爆発の可能性は調査されて然るべきであり、私達は直ちに実行に移しました。





格納容器から噴出する明瞭な水蒸気雲


爆発の雲が晴れるとすぐに、二つのはっきり見える水蒸気が3号機の破壊された上部のデッキから昇っているのが見られました。図2a)は爆発後、3分後の3号機で、


そこには、二つの水蒸気がはっきり見えます。これらは、春先の間中、図2(b,,d)に見られるとおりずっと続いていました。


Two distinct plumes


2a-d)爆発後から春先に掛けてずっと見られた3号機からの水蒸気


e





2は水蒸気雲を3号機の図面に重ね合わせたものです。当然ながら、その大量の渦巻く水蒸気は沸騰水の巨大な格納容器と相互に関係しています。〔23号機の唯一のほかの水体は3号機の南側にある使用済核燃料プールですが、水蒸気の柱は、3号機の中心の周りの点から出てきています。明らかに、これらのはっきり見える水蒸気雲は燃料プールからは出てきていません。








蓋のホットスポットと水蒸気雲の位置の一致


3は温熱検出写真を3号機の平面図に重ね合わせたものですが、格納容器の蓋のリム上に沿ってホットスポットが並んでいるのが解ります。


さらに、これらのホットスポットは、図2の水蒸気柱の位置にも沿って並んでおり、なおかつ、図4に示す爆発の位置とも一致します。


Unit 3 hotspots


3:アニメーション:ホットスポットは格納容器の蓋、水蒸気、図4の爆発の全てと合致している。左の燃料プールは位置が端によっている事と、これも使用済み燃料の影響で熱を出していることにも注意。





爆発雲は水蒸気雲と重なる





53号機爆発の最初の映像です。いくつかの爆発雲がはっきりと見え、こぶしのような形をした炎の固まりが南側の壁の位置を突き抜ける様子もはっきり分かります。


それと同時に、最初の爆発の雲が、後から発生した茸上の雲が真上の方向に上がっているのとは異なり、ほぼ45度の角度に噴出している事にも注目してください。


これらは水蒸気雲が出てきている原子炉の蓋のリムの上に集中しています。したがって、この水蒸気爆発モデルにおいては、これらの爆雲は、図2に見られる、直後に発生した水蒸気雲のフェーズです。


Initial explosive plumes


4 アニメーション:23のデータに基づく初期段階の爆発のモデル


私たちのモデルにおける水は、融解してガスが抜けた燃料による汚染によって黒ずんでいる。





5は、爆発が誘発されるメカニズム=別紙の森山論文で説明されているを説明している。ここでは、水は原子炉の下の格納容器の底に溜まっている。そして、溶融した燃料が圧力容器の底のメルトスルーによってできた穴から落ち、圧力容器の底にある水に当たった瞬間、水蒸気爆発を引き起こす。〔1〕よって私たちが考えるモデルでは、3号機に注入された海水は圧力容器から漏れ出して格納容器の底に溜まっている。圧力容器から落下した溶融燃料が水蒸気爆発を引き起こし、次に2次的な水素爆発を誘発する。〔1,3


Steam explosion trigger


図5:アニメーション:溶融した燃料の水面への落下が、水蒸気爆発の引き金となった。


6は、私たちのすべての所見を集約した結果としての、3号機の爆発に完璧に重ね合わすことのできる、揺るぎのない、論理的な圧力容器外水蒸気爆発のモデルを視覚的に表現しています。


私たちは、ここで図4の動画をさらに、“きのこ雲が開くポイント”まで進めており、その後に、予測されたとおりに、空に向かって上方向に燃料の汚染物を含んだ大きなボール状の水蒸気が巻き上がっていく様子につながっています。私たちは、格納容器内の爆発により発生した力が原子炉のふたを持ち上げ、大部分の海水を、ふたが再び落ちて閉じるまでの間に外に追い出したと仮定しました。しかし、爆発がふたのシール材に与えたダメージにより、図2に見られるとおり、何週間もの間、水蒸気が噴出し続けたのです。


Steam-explosion model


6:アニメーション:3号機の爆発に重ね合わせた、圧力容器外水蒸気爆発モデル





測定機器が示すこと


測定機器のデータが示すのは、3号機の爆発が、突然の爆発による排出からまさに予想されるとおり、格納容器内の顕著な圧力変動(圧力低下)と顕著に連動しているということです。〔4


Pressure rate of change


3号機の爆発は格納容器の上にある上部のデッキ空間で起きた単なる水素爆発であるとする東京電力の説は、爆発との関連性を明確に示す格納容器の同時発生的な圧力減少によって、疑問を生じさせます。





また、圧力容器に注入されていた海水が外にリークしていたことを示す事実もあり、それは図5に示すとおり、格納容器に水が溜まる結果をもたらします。3号機の爆発の20時間前に、東京電力がプレスリリースで次の発表をしています。


長時間、圧力容器内の水位が上昇しない状況と放射性物質の放出が増えている状況を考慮すると、3/121号機で起きた事と同じ状況が3号機でも発生する可能性を排除できない。





水位が長時間上昇しなかった事は圧力容器から水が漏れていた事実と辻褄が合います。また、最終的にそれが上昇したということは、格納容器内の水位が最終的には圧力容器の水位を上昇させるのに十分な高さにまで上昇したという理由付けが可能です。しかしながら、これらは複雑な状況での一つの発表から導いた推論であり、当時原発内にいた人でさえ、水位を示すデータの意味について確信はなかったということを頭においておく必要があります。





議論


メルトダウンが発生している過程での圧力容器外水蒸気爆発が、一つの深刻なリスクとして原子力業界と科学者たちによって認識されていたという事実を考慮すると、グーグルで見つかる、それを福島メルトダウンに関連付けた言及が、グリーンピース・ドイツのレポート唯一つであるというのは驚くべきことです。〔6





加えて驚くべきことは、福島原発で起きた複数の爆発の間にある劇的な違いに関する説明やただの言及でさえもが、今日までに、いかなる産業界、政府、学会からも、全く無かった事です。


それでもなお、原発がどのようにして爆発したかを正確に理解することは、将来の原発事故から人々を安全に守る上で助けになることは明らかでしょう。





日本政府の報告の中で、3号機の爆発は次のように説明されています:爆発が、それは水素爆発であったと思われる、3/121101に原子炉建屋の上部で起きた。〔7〕 ただそれだけです!全世界に疑問なく受け入れられるべき説明として、「思われる」の一言で済まされているとは驚くべきことです。それにも増して「思われる」とは何と比較してのことか?もし自分が「雨が降りそうだ」といった場合、


「雨が降らない」事に比較して起こりそうだということと、「雨が降らない」が意味することは私たちは分かる。その、起こりそうであるという可能性が何に比較して高いのかについて全く触れられていない。水蒸気爆発という言葉さえ政府の報告書には出てこない。よって、グリーンピースだけがその原子力用語になじみがあるか、政府と東電は他の考えられる可能性について沈黙することを選んできたかのいづれかのように見える。





格納容器の冷却水の漏れが数段恐ろしい水蒸気爆発の前提条件であることを考慮すると、東電が「現在、原子炉格納容器の中で冷却水の漏れが発生しているとは考えていません」と3号機が爆発する前のほとんど全てのプレスリリースで述べていることは興味深いです。〔8〕これは、考えていることを話す前に付けられていていることからして、実際には、「私たちは漏れについては何も分かりません」という考えについて述べた文言です。致命的な圧力容器外水蒸気爆発の必要条件が存在するかもしれない、という事を知っているかどうかについてのこのような否定は、東電に将来生じうる責任を減らすための意図的な事前の訴訟工作の色合いが強い。


考えられる理由としては、もし国民が、原子炉の中身が吹き飛んで降り注ぐことを知ってしまったら、格納容器の上のきれいな部屋での水素爆発だったと信じることと比較して、それは原子力業界の健全性を危険に晒す可能性があるからだと考えられます。東電の理論とは異なり、格納容器の爆発は


大量の放射性物質の降下を必然的に伴い、もし、これが実際に起こった真の危険性だと認められた場合には、国民を自らの防衛に回らせ、よって原子力業界を危険に晒す可能性があります。





最後に、本レポートに中で述べた確証は、一貫して格納容器内での爆発を主張し、なお、一番の可能性として沸騰水の大きな容器内における圧力容器外水蒸気爆発であったことを主張します。


2〕 このタイプの水蒸気爆発が起きた可能性が最も高いです。なぜなら、研究が示すとおり、原子炉そのものの内部で起こる圧力容器内水蒸気爆発は格納容器を突破する可能性は非常に小さいと考えられており、よって3号機での劇的な爆発を起こすとは考えにくいのです。





結論


上記でレビューされた複数の手法によって得られた事実が立証する事は、(a)水蒸気のプルーム、(b)サーマルホットスポット、(c)爆発の力、(d)水蒸気のようなきのこ雲、の全てが、格納容器として知られる沸騰水の大きな容器のふたの周囲に、その起点が集中しているベクトルと一致しているということです。


加えて、計器による測定が示していることとして、格納容器内の圧力が爆発とともに突然大きく落ちていること、(それは格納容器からの爆発と論理的に一致している)および、爆発の前日、注水活動にも拘わらず、長時間、原子炉内の水位が上昇しなかったこと(圧力容器からの水の流出と格納容器内のたまり水と論理的に一致)も挙げられます。 最後に、二つの爆雲の中に炎が存在することから、格納容器内の爆発が、格納容器内の空間と格納容器の上にあるアッパーデッキ内の空間の両方に溜まった水素ガスの二次的な爆発を引き起こした可能性が高い、という事です。



Notes


[1] Moriyama, K., et al. (2006). Evaluation of Containment Failure Probability by Ex-Vessel Steam Explosion in Japanese LWR Plants. Journal of Nuclear Science and Technology, 43(7), p.774-784
.


[2] We need not hypothesize that the container of water was boiling because its boiling is a fact accepted by any knowledgable observer because (1) water around melting and molten nuclear fuel is necessarily boiling and has to be replaced constantly to quench the rapid rate of boil off, and (2) the steam plumes seen in Figure 2 clearly demonstrate that water within Unit 3's leaking containment vessel was boiling. Recognizing that the containment vessel was a large container of boiling water, like a large pressure cooker before its seals failed, the theory that it suffered a steam explosion is recognizable as the default theory.


[3] JAEA. (2006). Nuclear Safety Research, Evaluating the Risk of Steam Explosions, JAEA R&D Review, p. 83
.


[4] Unit3 D/W pressure rate of change (MPa/h) in the period 0-96 hours after quake
.


See also: Reactor pressure vessel (RPV) and primary containment vessel (PCV, and aka just containment vessel or drywell D/W) pressure at the time of the explosion
.


TEPCO raw data for Unit 3
, some of it formatted here
.



[5] TEPCO Press Release (March 13, 2011). Impact to TEPCO's Facilities due to Miyagiken-Oki Earthquake (as of 3:00PM).


[6] Large, J.H. (2011). Brief opinion on the TEPCO plan to flood the primary containment of Unit 1 Fukushima Dai-ichi. Greenpeace Germany.


[7] Prime Minister of Japan and His Cabinet. (2011). Report of Japanese Government to the IAEA Ministerial Conference on Nuclear Safety - The Accident at TEPCO's Fukushima Nuclear Power Stations, Chapter 4.


[8] TEPCO Press Release (Mar 12, 2011). Plant Status of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (as of 11PM March 12th )
.