包まれた何か。

中味は何か。

知らなくても良い事を

その中に押し込めて。

穴を掘る。

深く深く。

それは自分の中に。

球体?四角?

たいしたことはないこと。

「待たせたね」

繰り返す、幾度も。

GESU guess 「解す」.

望まなくても望んでいても

答えはスグ目の前にある

見えはしないけど。

これからの人生で

あとどれだけの愛を紡げるのだろうか。

見つけられるのだろうか。

一つずつではわからないことも

まとめてしまえばはっきりすることもある。

見えない答えを隠さずに形創る。
古い知り合いに呼ばれて
久しぶりに沢山の人が集まる場所に出かけた。

見知らぬ老若男女に紛れて
自分自身をなぜだか消し去りたい衝動にかられながら、
知り合いを待っていた。

その場所で、彼と、出くわした。
ざっと考えても10年は経っていた。
大まかな部分は変わっていないとしても
年を重ねた分の色気が漂っていた。

「お久しぶりです。覚えていますか?」

思わず自分から声をかけてしまった。
彼は一瞬いぶかしげにこちらを見て、すぐに目を丸くして

「・・・びっくりした。誰かと思った・・・。」

間髪入れずに

「あんまり変わってないですよね?私。」

先制攻撃をうつ。

「うん、まあ変わってないけど・・・ふけたな。」
「失礼な!・・・そっくりそのまま言葉を返します!
 しかも・・・」

不意をついてお腹の肉をプニッとつまむ。すっと手を払われて、

「わ!触るな!肉を!つまむな!!」
「やっぱり年齢を重ねると、大抵はこうなりますよね・・・」

10年を隔てても変わらぬ何かがそこにはあった。

「お前はなんでここにいるの?」
「ちょっと、知り合いに呼ばれて久しぶりにこんなところに出て来たんです」
「へ~・・・今は、何してるの?」
「今は・・・なんちゃって主婦と、コラムとかちょっとした小説を書いてます」
「ふ~ん、元々興味のあった物書きのほうにいったんだね」
「そうですね。色々あったんですけど、落ち着くところはそこでした」

近況報告もそこそこに、連絡先を交換して、「じゃ」の一言で
彼は去っていった。

実際にはそれだけのことで。
その後私は、彼とのあり得ない展開を妄想し
パソコン上にストーリーを書き上げた。

過去への想いが捨てきれていなかったからだ。

彼のメールアドレスを見つめて、積み重なった言葉を考える。
昨日までは「普通に流れていた時間」

だけど今は重く体を取り巻いていく秒針


昨日までの笑顔は作りものだった

不思議なもんだね 今のほうが素の表情だなんて

嘘みたい


いやむしろ嘘だったほうがよかった

すべてが嘘の広がりで形成されていたんだよね


無言の中、考えて、考えて、考えて、考え尽くした顔してるけど

一体それで答えなんてでるものなの?

それが良い答えだと思ってるの?

とりあえず、考えた割に説明文が少なすぎて

要領を得ない問題なんだけど。


こうしていられることが奇跡だった

そう思えば少しは気が楽なのかもしれない


黙ってないで何か言ったら?

と言わない私だって沈黙と友達。

涙も友達。



強制終了されたものは仕方がない。

理由はともあれ、ここで終わる運命であっただけ。


再起動して、解決する問題?

そうかもしれないし、復旧不可能かもしれない。



戻れるならば復元ポイント

12/06/23へ


朝目が覚めると、珍しく毛布が体にかけられていた。
時計に目をやると、6時の4分前。シャワーの音が遠くから聞こえ
今日もいつもと変わらない日常が始まったのだとわかる。

起きぬけに台所に立つと、とても新鮮で神聖な気持ちが宿る。
お湯を沸かして、コーヒーを淹れると、湯上り姿のまま旦那が居間に現れる。

「毛布、ありがとう」

とりあえず、珍しい行動へのリアクションを返す。

「ああ。・・・・昨日は少し寒かったから。」

私に関しては無関心なんだと思ってた、と返したいところだったが

「確かに、昨日は冷え込んできていたからね・・・・。コーヒー、飲む?」

と、無難な返し方で旦那の反応を待つ。

「・・・一杯だけもらおうかな。」
「了解。じゃあ、先に服着てきたら?」

もう少し可愛い言い方もできるかもしれないが、
やはりどこか冷たい言い方しかできない自分を嫌悪する。
自室に引っ込んだ彼を見て、コーヒーの熱が冷めないように配慮しつつ、
自分は豆乳を入れたカフェオレを持って居間のソファに深く座り込んだ。
と、スーツを着込んで、現れる。
テレビニュースをつけて、コーヒーをすすると、

「・・・やっぱり、美味しいね、このコーヒー。」

思わぬ言葉に動揺する自分がいたが、
ふと思い立って旦那を背後から抱き締める。

「・・・・じゃあ、会社に行ってくるね。」

ぴしゃりとはじかれ、私の行動と気持ちを置き去りに出かけていった。

気がつくと、テレビからお昼を告げる曲が流れる。
私の中に、久しぶりの再会を果たした彼の顔が浮かぶ・・・。
自分にとっても、彼にとっても、
その再会は『二人の出会いが運命づけられていたのだ』と思わされた出来事だった。



ひとつ溜息をして、書きかけの文章をそのままにノートパソコンを閉じる。
もうすっかり冷めてしまったカフェオレを飲み干すと、私は床に寝転がった。

どれぐらいそうしていたのかはっきりしないが、玄関が開く音で飛び起きた。

「ただいま」

居間にいる私に一言そう告げて旦那は自室にこもってしまった。
いつもの光景。本当の私が住む場所。
カフェオレの入っていた、空っぽの器を濯ぎに台所へ立つと
珍しく部屋着に着替えた旦那がやってきた。

「お腹でもすいてるの?」
「うん、お腹がすいて死にそう。何か食べるものある?」

私の返事も聞かずに片っ端から食料のありそうな場所を探し始める。

「何かしら食べられるものはあるだろうけど、
 食材買ってきて何かつくろうか?」

それには返事をせずに、お茶漬けを取り出して、お湯を沸かし始めた。

二人の生活時間感覚に差がありすぎて、結婚生活がただの共同生活になっていた。
体の関係はまだあるにせよ、一年のうち片手ぐらいの回数で、
行為自体にあまり意味はないような代物でしかなかった。
 旦那が次に何かを話すまでは、再びパソコンに向かって文章を書き連ねようと
ノートパソコンを開く。

・・・そのまま一文字も進まずに朝を迎える。
というよりかは、パソコンを開いてそのまま眠りについていた。
風呂場のすりガラス越しに、体を洗う彼の姿を見つめる。

体育座りでぼんやりとしているうちに流水音が消えて、

ガラッ。

「わっ・・・」

たじろぐ彼を見て、笑いがこぼれた。

「何してんの!?」

咎められてもただ私は笑うしかなく、

「そんなに驚くとは思わなかったから・・・・」

言葉が続かず、おなかを抱えて笑い続ける。

そのやりとりが、一糸まとわぬ姿をまじまじ見ずとも10年の年月を感じさせ
彼の10年も色々な出来事が過ぎていったのだろうと思わせた。

「・・・あのさ、笑うのはかまわないけど、そこまでいくと怒るよ?」

「ごめんなさい。」

間髪いれずに謝罪する。

「10年前を思い描いている日常があって、突如こうして一緒にいる現実があって
その狭間を考えるのにすりガラスの曇り具合がちょうどよかったから
ずっと見つめてしまっておりました。すみません。」

ここは誠心誠意で、土下座をする。

「・・・そこまでしなくてもいいだんけど。いるはずのない場所にいられると、隙を突かれたようでびっくりするでしょうが。」

顔を上げて、一部モザイク処理を自分の中でイメージしつつ、平常心で話し続けた。

「未だにこれが現実じゃないような気がするのです。何か・・・欲望が作りだした淡い夢のような・・・虚像のような・・・。だからこそ、その微睡にとことん浸かりたいし、実感したいと強く思うんです。」

「・・・」

言葉よりも行動で彼の体は動いていた。気がつけば、ベッドの上に横たわりながら彼の顔を間近に見ていた。

「さすがですね。」

感嘆の声をだす。

「何が?」

「実感させようとする方法が。」

「・・・失敬だぞ、お前。」

とはいえそこから実感にいたるまで数分と掛からず、グウの音も出ず横たわる自分が居た。

「今この状況で謝るなよ・・・」

「・・・ありがとうございました。」

パシンと頭を叩かれ、また違う意味での実感。
再び彼に出会えてよかったと強く思えた瞬間であった。
「何も知らなかった頃に戻れたら、どんなに楽しいかって思いませんか?」

振り返って彼の顔を見てもう一度言う。

「何もわかってない時が楽しいものだって・・・色々知ったからこそ思えるんですよね」
「・・・まだまだこれからだよ人生は。もう知ってしまったかのように言うけど、実際は半分ぐらいしか把握していないものさ、人間なんて」

彼のそばまで行って、自分もタバコを吸う。
が、むせかえってかっこつかず。

「・・・やっぱり変わってないわ、お前は。」

頭の上にぎゅーっと手を押し当てられて、髪の毛をぐちゃっとされる。

「これ、この感じ、懐かしい。」

私がまどろみかけた瞬間、彼は立ち上がった。

「シャワー浴びてくるわ」

その背中を見送って、流水音が聞こえたところで彼のあとを追った。
私が匂いに閉じ込めた過去の波に飲み込まれないようにしていると、
彼のほうから口火を切ってきた。


「…最後に会ったのはいつだったっけねぇ…。」

「私が就職した時なので、10年は経ってますよね。」


口に出してしまうと、10年という言葉が大きく肩にのしかかってくる。


「10年か…。」

年代によって月日の感じ方が変わるというが、そういうことを飛び越して
彼の言葉には、端々に重い鉛の足かせを感じた。


「10年ってつぶやかれるとすごく年をとってしまったような気がします。」

「さすがにもうピチピチって年齢じゃなくなったもんなぁ。」

「残念ながら、ピチピチではないです。私自身10年前もピチピチしてたかが疑問ですけれど。」

「…ピチピチしてたよ。うらやましいぐらいに。」

それ以上、何も言い返せなくなって、沈黙の時が過ぎる。
気がつくと彼が、吸っていた煙草を灰皿に何度か押しつけていた。

「…そう言われるとピチピチしてましたね、確かに。今の自分から振り返るともう眩しすぎて。」

「その時に戻りたいと思う?」

「…戻りたいような戻りたくないような。今の記憶を持ったままなら、戻る意味がありますよね。」

「当たり前だな、それ。」

「でも、記憶を持っていなくても戻りたいかもです。」

「そうか・・・。」

次の煙草に火をつける。

「…なんで戻りたいの?」


しっかりとした理由をうまく言葉に出来ず、窓際まで歩きだした・・・。
何かこの腕の中は懐かしい匂いがしている・・・

「この匂い・・・」
つい口に出た。
「匂い?」
胸が離れて、顔をのぞきこまれる。

私は顔を上げて、相手の顔を見ることが出来ず、下向きのまま答える。

「・・・懐かしい匂い・・・」
「・・・懐かしい・・・か・・・」

笑顔+切なさの影が差しこむ。
その影に導かれて、初めて私は相手の顔をしっかり見た。正確には認識作業に入った。

「・・・お久しぶり・・・・です・・・」

懐かしいその笑顔。ただ見慣れていた顔と違うのは、眼鏡がない、それだけだった。

「この顔を見て酔いは覚めた??」

無駄な脱力感が体を襲う。

「全然人の話を聞いていないし、顔をちゃんと見る気もしていないのが見て取れるから
 どうしようかと思ったよ」

少しずつ自分の中で昨晩の記憶が紡ぎ直されていくのがわかった。

「時を隔てても、人間変わらない部分のほうが多いもんだよね」

次に出す言葉も思い浮かばずに、ただただ彼の顔を見つめていた。
と、急に我に返って自分の格好を改めて見直して、衣服をかき集めた。
もう一度顔を見ることが怖くて、しばらく背を向けていた。
すると彼が服を着る音がした。

「ご、ごめんなさい・・・」
「謝る必要性はどこにもないよ。それよりも、だいぶこけてあざだらけになってるけど痛くない?」
「とりあえず大丈夫です。あざは慣れっこですし。」
「なら、いいんだけど・・・。」

目の前のテーブルに置いてあった煙草を拾い上げて、彼は火をつける。
煙がきれいにのびていく。懐かしい匂いはこの独特なきつい煙草の匂い。
彼の体に染みついているこの匂い。
匂いと記憶が密接につながっているとは本当のことであろう。
彼がなぜ再び私の前に現れたのだろう・・・。

思いを馳せるのはその匂いの中に閉じ込めた記憶・・・。

ドアを開けたその眼前には、

おそろしほどにあざだらけの女性が・・・・・


無言でのけぞった私と同じ動きをするその女。

自分の見るも無残な姿に腰をぬかして、その場にへたりこむと

再び開いたドアに思い切り背中を打たれる。


「あ、ごめん・・・」


男の気の抜けた声に反応する余裕もなく。


「とりあえず、戻りなよ」


首根っこつかまれてズルズル引きずり戻される自分がいた。


冷静になってみると、部屋中鏡張りで目のやりどころがない。

文字通り真っ白な心と体でいたはずの自分の人生が走馬灯のように流れていく。

遠くのほうで誰かの声が響いている。我関せず。


「・・・っていう流れだったの、覚えてる??」


しばらくの沈黙の後・・・。

その場の状況をとりあえず飲み込んだということにして、声にならない声をだして


「・・・んーと・・・・・・、簡潔に言えば覚えてないです。」


一応、私は答えた。私に出来る最善の言葉で答えた。

自分の役目は終えただろうという思いで再び走馬灯の中へ逃げ込もうとした時

突然、強い力で抱きしめられた。

私は抵抗することもなく、ただただ時計の針の音だけを数えていた。


何かこの腕の中は懐かしい匂いがしている・・・