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ファービーのエンタメ記〜未知への道

エンタメ好きのファービーがお金と時間が許す限り鑑賞した舞台やコンサート、展覧会の軌跡を公開♪

※あくまで主観が入りますので、ご了承下さい!

ケン・ヒル版「オペラ座の怪人」
ケンヒル版「オペラ座の怪人」


《概要》
鑑賞日時:2013/12/27(金)13時30分
会場:東京国際フォーラム ホールC
購入チケット:S席¥10,000
券種:S席¥10,000/A席:\8,000/B席:\6,000
上演時間:2時間45分(休憩15分/アフターショー15分あり)

原作:ガストン・ルルー
脚本/演出/作詞:Ken Hill
出演:Peter Straker/Anna Hawkins/Camilla Besley/EdwardNewborn/Sam Bentonほか



《farby's Eye》 (ふつう=★★)
演技力:★★★★☆
芸術性:★★★★☆
意外性:★★★★☆
演出力:★★★★★
感動度:★★★☆☆



【イントロダクション】
ミュージカル『オペラ座の怪人』ケン・ヒル版、9年ぶり5度目の来日!
ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」初のミュージカル化として、アンドリュー・ロイド=ウェバー版に先立つ1976年に初演された本作は、改訂を経た84年以降、世界各地の『オペラ座』ファンを魅了し続けてきたミュージカル・ドラマだ。
ビゼー、ドヴォルザーク、グノーらの珠玉のアリアを劇中に散りばめ、ケン・ヒル書き下ろしの歌詞に乗せて紡がれるストーリー。ユーモアさえ感じさせる巧みな人物描写も見どころとなり、〈愛するが故の悲劇〉が色鮮やかに描かれる。


【ストーリー】
「ここには幽霊が住んでいる―」
パリのオペラ座の舞台裏では、こんな噂が囁かれていた。
劇場関係者は幽霊にまつわる慣習を守りながら働いていた。
しかし、新任の支配人リシャードはまったく信じず、諭されても取り合わなかった。
ある夜、無名のコーラスだったクリスティーンがヒロインの歌姫カルロッタの代役を務めたオペラ「ファウスト」の公演で、出演者が不慮の死を遂げる。
遺体のそばには、幽霊からの謎のメモが添えられていた。
一方、恋人クリスティーンの楽屋を訪れたリシャードの息子ラウルは、部屋の中から彼女と男の声を聞き、嫉妬に駆られる。
クリスティーンは《謎の男》との不思議な体験を打ち明け、ラウルへの愛を誓うが、物陰に身を潜めてその様子を伺う人影があった。


【レビュー】
※作品の内容についてのネタバレを含みます。

「オペラ座の怪人」の原点はこのケン・ヒル版!!
大勢の人が思い浮かべる“いわゆる”「オペラ座の怪人」は、アンドリュー・ロイド=ウエーバー版(以下、ALW版)である。
「エビータ」や「キャッツ」、「ウーマン・イン・ホワイト」などの作曲で知られるミュージカル作曲家アンドリュー・ロイド=ウエーバーと、「キャッツ」や「レ・ミゼラブル」、「ミス・サイゴン」を手掛けたイギリスを代表するミュージカルプロデューサーキャメロン・マッキントッシュが手掛けた。
ALW版「オペラ座の怪人」は、1986年にロンドンのウエストエンドで初演され、その2年後にニューヨークのブロードウェイで上演され、ウエストエンドで27年、ブロードウェイでは26年間もロングラン上演されている作品である。
日本の劇団四季で上演されているのもALW版のアレンジで、ハリウッドで映画化もされているなど、誰でも一度は見たり曲を聴いた事があるであろう作品となっていった。

そんな超有名な「オペラ座の怪人」は、実は本作ケン・ヒル版が原点なのだ!!
アンドリュー・ロイド=ウェーバーはケン・ヒルが創った「オペラ座の怪人」を観て感銘を受け、「この作品を更に大規模な公演に発展しよう!」とケン・ヒルにコラボレーションを持ちかけたという。しかし、この話は身を結ばず、アンドリューは独自で作曲し、メガヒット作の「オペラ座の怪人」が生まれたというわけだ。
アンドリュー自身も自身の「オペラ座の怪人」創作には、ケン・ヒルの今作が大きな影響を得たと認めているが、ケン・ヒルがアンドリューから一銭も著作権料をもらっていないというエピソードもある。

このケン・ヒル版は原作小説の非常にユニークな派生作品である。
ヴェルディ、グノー、オッフェンバック、モーツァルト、ドニゼッティ、ウェーバーらの既存の音楽(オペラのアリア等)に創造的な詞を作詞し、殺人とミステリーの世界に歌を加える舞台演出をした。
「怪人」が単なる「芸術家の想像の産物」ではなく、むしろ劇場に入場する全ての者の、心の琴線に触れる魂そのものであるという観点から創作している。

台詞7割/唄3割の音楽劇!!
ケン・ヒル版の特徴は、何といってもミュージカルなのにセリフの割合が多いこと。
唄と芝居のメリハリがついていて、どちらかというと【演劇の劇中劇でオペラ曲が歌われる】作品なのだ。

僕自身、ケン・ヒル版は今回が初めてだった。
客席前方の天井には大きなシャンデリアが備え付けられていたのを見て、ニューヨークで観たALW版のように、カルロッタが殺されるシーンでそのシャンデリアが客席から斜めに舞台場へ落ちてゆくのだろうと予感していた。
実際は、客席上にあるシャンデリアが揺れて、「あ!落ちる!!」と思ったら、そっちではなく舞台上に現れたシャンデリアが落ちるという不意打ち!!

また、(実際に観客がいる)客席もオペラ座の舞台として使って役者が客席(2階席も!)を行き来したり、随所に笑える場所がつくられているのは、ケン・ヒル版の特徴だろう。
劇中で使われる音楽は、正直なところALW版のが馴染みがあり、物足りなさを感じてしまったが、オペラ楽曲のクラシカルな楽調がこのオペラ座の格調高さを盛り立てていた。

怪人役Peter Strakerの演技は怪人の気高さと俗世から離れて生きることを余儀なくされた孤独さと悲しみを絶妙な演技で魅了していた。
楽曲的に、ALW版のような大きな曲の魅せ場はなかったが、クリスティーヌ役Anna Hawkinsは清純な役柄を透き通った歌声と演技で魅せていた。

ケン・ヒル自身が本作について、
「Enjoy it. It's all fun. Though it has its serious bits. As in life...」
(“舞台を楽しんでくれ。全くもって楽しい舞台だ。ちょっとだけ深刻なものだけどね。人生のように…”)
と話しているように、観客が格調高き“オペラ座にいる”ことを感じ、物語により深く入り込む仕掛けが絶妙だった。
ALW版は【怪人とのロマンス】を描いているが、
ケン・ヒル版は【劇場の魂】が描かれている。
「オペラ座の怪人」が役者のための物語であり、劇場と作品に携わるスタッフの物語でもある。
と共に、観客のための物語でもあるのだ。


アフターショーでは、怪人役のPeter Strakerのオリジナル曲2曲を披露するショーだった。
怪人を演じている時は、気高さと悲しみを繊細な演技で魅了していたが、このアフターショーではひょうきんに明るいミュージシャンとしての姿が見れ、そのギャップが可笑しかった(笑)



東京国際フォーラム ホールCにて12月29日(日)まで

[リンク]
ケンヒル版「オペラ座の怪人」特設サイト