陸上自衛隊の情報保全隊の活動に対して、「違法な情報収集で人格権が侵害された」と訴えていた裁判で、仙台地裁は訴えの一部を認め国に賠償を命じる判決を言い渡した。
だが、国の安全を守るために自衛隊が情報収集するのは当たり前の活動だ。それに情報を漏洩させたのは自衛隊側でなく、共産党だ。国の防衛を考慮しない判決で、納得がいかない。
漏洩された「内部文書」
問題の発端は、陸自情報保全隊が2003年から04年にかけて自衛隊のイラク派遣に反対する団体やジャーナリストなどの動向を調査していたとする「内部文書」を共産党が公表したことだ。東北6県107人が監視されて精神的苦痛を受けたとして、監視活動の差し止めと計約1億円の損害賠償を求めた。だが、情報収集それ自体は違法ではない。防衛省設置法4条は防備や警備に「必要な情報の収集整理に関すること」を業務としている。当時、陸自部隊がイラクに派遣され、反対運動が過激化し自衛官やその家族に及ばないか危惧されていた。情報保全隊が反対運動の動向を調査するのは当然の任務だった。
判決も監視自体を違法としていない。しかし、原告5人(うち4人は共産党議員)について氏名や「日本共産党の市議」「社会福祉協議会職員」などの情報記載があり、国側が情報収集の目的・必要性を具体的に主張していないとして訴えを認め、計30万円の支払いを国に命じた。
この判断は解せない。判決は情報保全隊が「氏名、職業に加え、所属政党など思想信条に直結する個人情報を収集している」と認定したが、共産党は破壊活動防止法の調査対象団体だ。調査すれば、「所属政党」に触れざるを得ない。
また判決は「自分の個人情報をコントロールする権利は、法的に保護すべき権利として確立している」とするが、原告の4議員は公職だ。「所属政党」といった個人情報が保護すべき権利に含まれるとは思われない。
問題は情報が漏洩したことの方にある。自衛隊の「内部文書」が一政党、それも共産党に提供されたのは驚くべきことだ。自衛隊法59条「隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」に違反する疑いが濃い。
防衛省は「内部文書」について、情報収集の手の内を見せないため情報保全隊が作成したかどうか明言していない。それは理解できるが、漏洩ルートを解明したのか、疑問が残る。仮に自衛隊内に共産党などの「反体制勢力」が巣食っているとすれば、由々しき事態だ。
そもそも情報保全隊は、他国の情報機関などのスパイ工作活動で、自衛官から情報が漏洩するのを防ぐための組織だ。00年に海上自衛隊3佐がロシア大使館駐在武官に機密を漏洩し逮捕され、これを受け03年に調査隊を改称し強化された。
情報保全の現状問い直せ
こうした経緯を見れば、いま必要なのは秘密保全法もさることながら、スパイ防止法であることは明白だ。そうした法整備も視野に入れ、情報保全の在り方を問い直すべきである。


