1969年のハリウッド、西部劇映画で一躍有名になり売れっ子俳優だったリックだが、現在は落ちぶれてしまい、あの人は今状態。そのスタントマンで、同じく現在はスタントのスカウトも音沙汰なしで、リックの付き人状態になっているクリフの2人は、親友にして良き理解者。

今後のキャリアに悩む二人だったが、ある日リックの家の隣に売れっ子監督のロマン・ポランスキーと、その妻シャロン・テートが引っ越してくる。架空の人物と実在の人物が交錯し、フィクションとノンフィクションが混在していき物語は大きく傾いていく・・・。

 

 

基本は賞味期限を過ぎた中年俳優と、そのスタントマンの友人が、再起を懸けて四苦八苦する姿をブラック・コメディタッチに描いている。最近のタランティーノ作品同様、2時間半越えのまあまあのボリュームを、くだらなかったり情けない、ある意味どうでもいいようなシーンに割かれている。

しかし、それこそが今作の重要なところで、ラストを衝撃的なものにするための、あえての垂れ流し(笑)でも、それが全然眠気誘うつまらなさかと言われたら全然そうじゃない。というか、むしろ時間忘れて楽しめるくらい面白い(笑)

 

リックを演じるディカプリオの落ちぶれた演技が尋常じゃなくリアル!

かつてはバンバン主演を張っていたのに、悪役で出演している撮影シーンでセリフをド忘れしてしまい自分を責め続けるシーンは、コミカルなはずなのに、どこか哀愁が漂っている。

リック自身が納得でき、かつ周りから絶賛される演技シーンは迫力満点で、まるでジャック・ニコルソンが憑依しているようだ。この撮影しているマカロニウエスタンを全編観てみたい!

 

 

クリフを演じるブラピのイケメン・美ボディー!

ブラッドピットは、長髪&ヤギ髭をカットし、50代とは思えない若々しい肉体美まで見せている。“ブレット・トレイン”は時も思ったけど、ブラピって・・・やっぱり超絶カッコいい!

 

 

スタントマンとして数々の試練や危機を経験した男だけに、肝が据わっており、どんな危機的状況にも全然動じないし、喧嘩めちゃ強い!

牧場でのチャールズ・マンソン・ファミリーに警戒される中での堂々の立ち居振る舞い、リックの車のタイヤに穴を空けた男への度が過ぎた暴力での復讐シーン、惚れてまうやろ!

 

 

妻を殺害したという真偽不明の過去を持ち、普段はフランクでおっとりした性格だが、キレたら徹底的に暴力的になるヤバい雰囲気なんかは、ちょっと“スナッチ”なんかも思い起こさせるハマり役!

そんなヤバくて度が過ぎた暴力行為で、ラリッた状態でチャールズ・マンソン一味を完膚なきまでに痛めつける(&リックの燃やし尽くす(笑))圧巻のラストは痛快極まりない。

 

 

ブルース・リーの扱い(笑)

亡くなった伝説のアクション俳優に対して、態度でかくて嫌な奴のキャラ設定はどうかと思ったが(実際にそうだった?)、口だけの男ででクリフにボコスカにやられてしまうシーンは思わず苦笑い・・・。

 

視聴者は、確実に起こる、逃れられない実際に起こった凄惨な「シャロン・テート事件」へのカウントダウンを、ドキドキしながら見守ることしかできない。

マーゴット・ロビー演じる愛くるしい妊娠中のシャロン・テートが無残に殺害される姿を、成す術もなく見せられると思うと(しかもタランティーノだからなおさら壮絶に容赦なく描くのが予測される)、居ても立っても居られない・・・。

 

そんな中でのこの、史実と異なる、いや真逆の展開!ロマン・ポランスキー宅へ押し入ろうと路上で話し合う一味を、リックがいちゃもんを付けたことにより、標的がシャロン・テートから彼に変更されるのだ!

 

無抵抗な被害者を12か所もめった刺しにして殺すという狂気じみた暴力に対する、映画の中でしかできないマンソン一味への完全なる反抗とファック!

いやー、これほど全く予想ができなかった展開は初めてかも!そして、こんなにも爽快感のあるラストもお初な気がする!血みどろ人体破壊&黒こげの嵐だが、なぜかそこには清涼感さえ感じるのだ。

暴力を持って暴力を制する、ではなく、無差別で無慈悲な暴力に対する男女関係なしに徹底的な暴力をもっての反対!このタランティーノ節はお見事!としか言いようがない。

こんなぶっ飛んだ設定と描写は、彼以外に描けるはずがない(笑)

 

 

思い返すと、リックが過去に出演した映画のワンシーンに、ナチスを火炎放射器で丸焦げにするシーンがあり、そこは“イングロリアス・バスターズ”のラスト、ヒトラーを含めナチス連中を銃乱射で虐殺する史実と異なるシーンとリンクしており、意外な展開のラストへの伏線とヒントが与えられている!そこもニクイ演出!

 

 

2人の日常を描きつつ、シャロン・テート事件を織り交ぜながら巧みに描かれる脚本がとにかく素晴らしい。

これ、“レザボア・ドックス”、“パルプ・フィクション”以来の傑作ではないか?

 

評価★★★★(星5つが満点)