父の病状が悪化し、看病するため実家に戻ったルイーズとマイケルの姉弟。しかし、母はどこか様子がおかしく、「来るなと言ったのに」と突き放した態度を取る。翌日、母親が不可解な自殺をして亡くなる。

それからというもの、寝たきりのはずの父が突然バスルームに現れたり、死んだ母親が外に佇んで笑っていたりと、奇妙な現象が続く。

父の看病で実家から離れることもできず、恐怖により二人は徐々に精神を追い込まれていく・・・、というホラー映画。

 

 

これまで観てきたホラー映画で怖いと思った作品って、実のところ正直ほとんどない。

パッと思いつくのが3作品くらいで、小中学生の頃に観た“リング0 バースデイ”、“仄暗い水の底から”は邦画独特のジメっとした嫌な空気感とトラウマ級の怖さで(今観返したらそうでもないのかな?)、最近観た“ヘレディタリー/継承”は、作品全体に流れる徹底された不気味さとトニ・コレットの激ヤバ演技にヤラレタ!

 

それ以外の作品はといえば、正直恐ろしくて観るのが怖いとかドキドキ感なんてものは一切なかった。どちらかと言えばゾンビものみたいなツッコミどころが満載で笑えたり、“死霊館”シリーズなんかは、ハマったものの怖さというよりサスペンス=ストーリーの巧みさを楽しむといった感じ。

そんな中、ストーリーも知らない・出演者も知らない・監督も知らないという、予備知識全くなしの状態で観た今作、想像の上の上をいくリアルにちゃんと『怖い』ホラー映画だった!!

 

 

今作、序盤は帰省した姉弟のやり取りがメインで、スロースターターな出だしではある。

 

が・・・、母親が人参と一緒に包丁で自身の指もカットするシーンから恐怖は始まる!切断した指をさらに細かく刻むシーンは、結構グロい!いや、かなりグロい!

特に、まな板に包丁がカツっと当たる音が不気味に響き超絶居心地が悪くなるのだ。その後彼女は自ら首を吊って自殺する。この、ホラー映画にありがちなシーンがこれほどまでに真に迫ってくるのは、映画だからド派手にしようという演出が一切なく、リアルさを追求した結果だと思う。

 

ルイーズがシャワーを浴びていると、床がきしむ音が聞こえたため、バスルームのカーテンを開ける。すると、寝たきりの父親が白目を剥き、トランクスからは小便を垂れ流して立っている・・・!

 

 

これで完全にノックアウトされた!音にも父親の恐ろしい顔面にもビビるのだが、ここでもやはりリアルさが恐怖を倍増させている。恐ろしい顔面と言っても、特殊メイクと言うよりはただ白目を剝いているだけで、特段襲いかかってくるとかいうのではなく、そこに佇んでいるだけ。でもそれが異様にリアルで恐ろしいのだ!

 

極めつけは、マイケルが寝ていると電気が何度か勝手につくためその度に消すのだが、暗くなった部屋が映し出されると、何かが写り込みそうで心臓バックンバックン状態(笑)カーテンを開けて窓を覗き込むシーンで、絶対外いるから~っと緊張に耐えられなくなり停止してしまったほど・・・。夜観ていたのだが、その後再生ことができず翌日持ち越しになった(笑)

 

 

終盤、あまりの恐怖に姉を置いて家族のもとに帰るマイケル。マイホームに帰った彼を待ち受けていたのは、キッチンで血だらけになって息絶えた愛する家族!妻が二人の子供をナイフで殺害し、心中を図ったのだ。

希望を失ったマイケルは、自ら首を掻っ切り家族のもとへ→意識を失っていく中で家族の姿を見ようと視線をあげるが、そこには誰の姿もない→実はこれ、悪魔が見せていた幻想だった→時すでに遅しでマイケルは苦しみながら息絶える→帰ってきた家族はマイケルの死体を発見し絶叫。救いようがない・・・。

 

 

この救いようのなさは、マイケルに置いて行かれ、呪われた実家にたった一人となったルイーズも同様で、父親に最期まで寄り添おうとする彼女だったが、父が息を引き取った直後に背後から父親?悪魔?に急襲され絶叫→エンドロール!

おそらく彼女も死亡したのだと予想される・・・。

 

 

この、とことんまで最悪の後味を追求する求道者的な脚本(笑)

決して観る者に媚びない姿勢は、ある意味賞賛に値する。ルイーズだけでも助けてあげようなんて考えは一切ないのだ!

 

今作、おそらく低予算だがグロさも秀逸で、先述の母親の指切断シーンはもちろん、信心深い看護師が、自身で手編みの棒針を頬っぺに突き刺し、終いには腹部・両目に突き刺すシーンの痛々しさといったら・・・。

この辺だけ、若干アメリカンな悪魔感=リアルさの欠如が出現(笑)←これはこれで、今作のリアルだからこそ観る人によっては若干地味に思える部分の補完としての分かりやすい盛り上げは、まあアリかな!

 

 

リアルさと正体不明の不気味さでいったら、“ラム”とも通じるかも!今作でも家畜として飼っているヤギが出てくるし(笑)ただし、今作ではほとんどのヤギは死滅してしまうのだが・・・。

“ラム”は宗教的な裏テーマがあるようだが、今作も実家に捕らわれることの苦痛といった裏テーマがあるようだ。動けない母を看病するため田舎町に捕らわれた息子が主人公の“ギルバート・グレイプ”なんかが少し過ぎったりした。

 

最近のホラー映画は全然怖ないわ~と半ば呆れている方、リアルさのある本当に怖い映画を観たい方には、ぜひおススメしたい作品!

 

評価★★★★(星5つが満点)