こんな日は、星を見よう。
ベランダから空を見上げる。片手にホットココア。ラム酒を入れて。
こんな都会じゃ、オリオン座ぐらいしか見つけられないけど。
クリスマスが近くなってくると、恋人が欲しくなる。というのが世間の通説らしい。
正直言って、「恋愛は幻想」と割り切った自分には関係の無い話。
クリスマスが近づこうが卒業が近づこうが恋愛というものはもう私には縁が無いんだ、そう決めていたのに。
「そーいや、本橋別れたらしいね」
終わった話。
「確か、さっちゃんって本橋のこと好きなんじゃなかったっけ?」
「今がチャンスなんじゃん?」
もう、一年以上も前に。
「なーに冗談言ってくれちゃってるの。どこをどう見たらそういう話になるかなぁ?」
一年前の夏。
無かったことにした、告白。
「でもさ、女子の中ではさっちゃんが一番仲いいしー」
「仲がいいのと恋愛対象になるのは違うってことぐらいわかるでしょうが」
そう、違うから。
『きっと私も自分の気持ちを勘違いしていたんだ』ということにした。
いつもそうやって、友達に戻った。
今まで卒業にあわせて告白してたのも、断られることをどこかで予感してたから。
時間がうやむやにしてくれるから。友達にしてくれるから。
「一時期、二人がすっごいよそよそしい時期あったよね」
「あったあった、あん時はとうとう来たかと皆で発表を心待ちにしてたのにね」
「そんなもの私に期待するな」
よく『普通』に戻れたと思う。今までどおりに顔を合わせなきゃいけないという状態でやりづらくなる事は覚悟していたのに。
いや、逆か。今までどおりにしなきゃいけないから、事務的な関係と割り切ればそこから友達に昇格することは難しくない。
割り切ってしまったから、どうとも思わない。
どうとも思わないのに、少しだけ心が痛むのは、どうして?
「一人に対してワンチャンス、って決めちゃったからなー」
ホットココアから立ち上る湯気。夜の外気に儚く消える。
『付き合うなんてめんどくさそうだし、私には似合わない』を標榜してる割には誰にも知られないところで恋愛感情抱いちゃったりする自分に苦笑。
「どーなんでしょうねー、付き合うって」
ホットココアを一口。ミルクで作るほうも好きだけど、こうやってラム酒を入れるのも好き。アルコールの力も多少借りて、中からあったまる。
「うん、『私は皆が好きだから、だからそれ故に誰にも恋愛感情は抱いてない』。うん」
今日も一人、自分に言い聞かせて、『自分』であり続ける。
いつまで続くか、わかんないけど。