『おはようございまーすっ!』




登校してから教室に入る度、いつも“こいつ”のおはようが一目散に。


高校も早2年目になり、みんなそろそろ慣れてきたであろう頃。



幼稚園時代からの付き合いである、幼馴染の後輩が入学してきた。


“こいつ”は幼少時代から、どことなく俺の跡をつけてくるやつで。






『せんぱーいっ、今日も1人なんですかっ!?』




教室入ってからの→机に突っ伏すってのはデフォだったんですが、


どうやら“こいつ”にとって、そんなデフォさえも最近書き換えられてしまった。



正直ゆうのもなんだけど・・・“こいつ”といると疲れるんだよね。


でもそんなことゆうと、また俺への言葉の嵐を加速させてしまうから。






その後も、朝のHRの始まるぎりぎりまでマシンガントークしやがって。


でもね、教室を出て行く際に見える、あいつのなんとなく寂しげな表情・・・。



その表情とやらが、なんとなく俺を混乱させてしまって。


なんてゆうか、2年に入ってしばらくは、1年のときより成績が落ちてたんだ。













ある日、また朝一番の教室の扉の向こうには・・・またあいつの姿が見える。


俺は別に、そんなに嫌だとか、そんなに鬱陶しいとか、全然思ってなかったのに。




『おっはよーうございまーすっん!』


『・・・せっ、せんぱいっ?』




俺はその日、初めて後輩を無視してしまったんだ。


机に突っ伏す寸前にあいつの表情を見てみたけど・・・なんでか知らないけど。





不意に心臓あたりが、ぎゅーってなった。













以来、朝一番の挨拶といい、お昼を一緒にするのといい、一緒に帰るのといい。


そういったあいつとのそれまでの学校での毎日が、少しずつ姿を消していった。



そのかわりに、お互い帰宅後のメールのやりとりが増えていったんだ。


それまでの毎日の学校での会話も、それ以来はメールが中心になっていった。






ある日、偶然登校中に後輩とばたりと会ってしまう。


・・・当然、なんとなく気まずい感じがして、とりあえず俺は。




『おはよう。』



ってゆったのに・・・次は、あいつから無視された。


あいつはいそいそと小走りしていった・・・俺は、こうして取り残された。









俺は気付いた。


後輩が俺に話してかけてくれること。俺と飯を食ってくれること。

俺と一緒に帰ってくれること。俺にはいつも笑顔でいてくれること。



後輩がいなくなっただけで・・・こんなにも、毎日が楽しくないんだなって。




俺は、帰宅後、すぐに突っ伏した布団の上にて、声を抑えて号泣していた。






俺はその日以来、後輩からのメールを拒絶するようになった。


















ある日、



朝一番の布団にて、


後輩から一件の着信。




・・・俺は怖くなって、その場でiPhoneをぶっ壊そうかと思ったけど。


なんだか気が引けたから、とりあえず出て・・みる・・・こと・・・・に。




『もしもしっ、もしもしっ!?―――』



けたたましくて甲高い、またあいつの声が響くか・・・と、思いきや。


電話の向こう側は、どうやら後輩じゃないみたい。声でわかった、おいおい。






『すみませんっ、携帯を見たら貴方の連絡先しかなくって・・・。』



・・・えっ?どうゆうこと――――――、






『 こ の 携 帯 の 持 ち 主 と 思 わ れ る 女 性 が
先 程 乗 用 車 に 轢 か れ て し ま っ た よ う で す 。 』




・・・はっ?






俺は、昔から頻繁に交通事故が起きる、あの場所に違いない。


そう信じて、電話の向こう側がまだ余韻を残しているのを気にせず。




俺は、一目散に走り出した。


















なんとか・・・着いて、しま、っ・・・た・・・。




そこには、無惨な程に飛び散散った血飛沫が・・・。






・・・はははっ、信じられるかよっ・・・。




こ、こんなの・・・っ・・・嘘、だよな・・・っ?









俺もまもなく、意識を失った。













気が付けば、真っ白な天井が視界に広がっていた。


ふと横倒れになって、次に視界に入ったのは・・・、






どこか見覚えのある、1人の少女が・・・っ。




あ、ははっ、そっかぁ・・・道理で、見覚えあるんだな。



茶色く綺麗におろした前髪に、かなりくりんとした大きめな目。


普通の女子より一段と肌白くて、ほっぺたがすんごくやわらかそう。



真正面からは見えないけど、多分そんな気がする・・・っ。


ってゆうか、もう横顔でわかるんだよ・・・っ。






そこには、隣のベッドで仰向けになった、後輩の姿があった。









こんなにも後輩の近くに自分がいるのって、いつぶりなんだろうな。


すんごく久しぶりな気がするけど・・・まぁ、そんなのどうでもいいよな。




俺は立ち上がり、久しぶりに後輩の手に触れ・・・た・・・。






ものすごく冷え切った、昔の後輩との手触りとは思えない、この感覚。


脈も打ってなくて、そういえばさっきから呼吸の1つもしてなくて――――――っ。









うん、最初からわかってた。


最初っつっても、手を触れたときだけど・・・さっ。




今、俺の前で、今にも目を覚ましてくれない、この少女は。









後輩は、もう息を引き取ったんだろう・・・な、って。













最初は、信じられなかった。


ってゆうか、信じたくなかった。




何回名前を呼んでも、どれだけ泣き叫んでも、いつまで手を握っていても。










―――――― もう、笑ってくれることも、話してかけてくれることも。


一緒に弁当を食べることも、一緒に帰ってくれることも、メールしてくれることも。













・・・っ ―――――――――――――。






俺は、ただ、いつか起きてくれることを信じるしかできなかった。


















数日後、あの日以来1回も触れてなかった、久々のiPhoneに触れる。


不意に自分の手は、メールをタップしては、下にスライドさせた。




すると、わずか3件の後輩からのメールのみ、新着表示された。






***1件目******



6/18 07:32:06


今朝はごめんなさいっ...
無視したりして(´・ω・`)...

先輩からの挨拶なんて、
人生初なのにっ(´;ω;`)...


iPhoneから送信




後輩・・・っ、




***2件目******



6/24 00:02:18


なんだか...
先輩に会いたくなってきちゃった。

明日、朝一番で悪いですけど、
先輩宅にお邪魔しちゃいますねっ?



iPhoneから送信




俺は・・・お前のことが・・・っ、




***3件目******


6/24 06:13:24


先輩...起きてない、よね...?
今なら、メール気付かないよね...?

実はね(´・ω・`)...?




あたし、ずっと隠してたことがありますっ///






それはね(`・ω・´)...?









ずっと、先輩のことが大好きでしたっ(*´ω`*)///


iPhoneから送信






大好きだ。
























電話でお前の一報を受けたあのときの、



『すみませんっ、携帯を見たら貴方の連絡先しかなくって・・・。』




・・・俺って、そんなに想われてたんだな・・・っ。






もしかしたら、俺・・・っ。



ずっと後輩より幸せな思いしてたのかもしれないな・・・っ。




せめてお前が死ぬまでに・・・“大好き”の一言くらい、言わせろよ・・・っ。






なんで先に死んじゃうんだよぉ・・・この想いはどうしたらいいんだよ・・・っ。









お互い両想いで、付き合って、それからずっと一緒に・・・いたかったっ。



笑ってくれたり、話してくれたり、ただそれだけでもよかった・・・っ。




俺の隣を、お前がずっと並んで歩いてほしかった。



お前の隣を、俺がずっと離さないで歩きたかった。









こんな後悔するくらいなら・・・っ・・・。













・・・後輩、聞こえていますか。









後輩、今でも俺はお前のことが大好きです。






多分ってゆうか絶対、後輩より俺の方がずっと・・・お前のことが大好きです。









俺は絶対、お前が声で伝えられなかった“大好き”も。






お前が俺と一緒になれなかった分全部の“幸せ”も。













全部、全部、全部・・・お前の分まで、精一杯がんばって生きるから。






それで、もし俺も終わったときは・・・そのときは。






























次は、もう一度貴方とやり直させてください*
























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