Hは馬鹿みたいに仕事をする人でした。
遠距離で月1回しか会えない時も、わたしが夜勤明けで東京を出発し夕方近くに彼の住む街に着いても、彼が帰宅するのは決まって夜中。
もうすぐ駅に着くと連絡が来ると、わたしは用心深く暗い夜道を駅まで迎えに行ったものでした。
Hは心配していたけど、それでも駅でわたしの姿を見掛けると、シャイボーイらしく表情は崩さず、でも滲み出る嬉しさに溢れていました。
またたまに早めに帰れそうな時でも、彼の上司に突然食事に誘われて、
「あなたも来る?」
と訊かれる事も1度や2度ではなかったように思います。
彼の友達は、そんなHを怒っていたようです。
せっかくわたしが遠方からはるばる新幹線で来ているのに、
しかも月1回の大切な日なのに、
職場の上司との食事にわたしを駆り出すのは気の毒じゃないかと。
「いや、でも彼女はいつも来てくれるよ」
とHが言うと、それこそ非難轟々だったそうです。
「○○達が璃子が可哀想だって言うんだよ。
月イチしか会えない時に、仕事関係持ち込むなんて、お前何やってるんだって言うんだけど、僕には璃子が嫌そうには見えなくて…。
正直なところ、璃子は嫌か?」
ある日、Hは困惑した顔でわたしに訊いて来ました。
「ううん、別に平気。
あなたにとって大切な人や物は、わたしにとっても大切だから。
それに…
そんな事に気を遣うようなわたしではないし。
そう言うお食事会も楽しいなーって思う。
むしろお酒を注ぐ事が出来ない事の方が申し訳ない位。」
そう、わたしは飲み会等でお酒を注ぐと言う事が苦手でした。
職業的にそうなのでしょうか。
例えその場に男性が居ても、わたし達女性に注いでーと言う人はいませんでしたし、わたし等は機会飲酒なので、そのタイミングも全く分かりませんでした…
こんな感じですから、彼の上司に誘われようと、職場の同僚に誘われようと、彼の友達がわんさと遊びに来ても、全く動じないなかなか図々しいわたしでした。
彼の友達とはサッカーも一緒にしちゃうし(笑)
頭上高くそびえるフェンス?も、一緒にサッカーをする為なら一緒に登っちゃうし^^;
眠くなったら寝ちゃうし、お風呂にも入っちゃうし
💦
だからこそ、彼のお友達も同僚も上司もいきなり現れたり、誘ってくれたのかもしれませんね。
ある日、彼のマンション近くで夏祭りがあるとの事で、早く帰宅すると言ってくれたHを待ちながらシャワーを浴びて浴衣の着付けをしていたら、同僚に声を掛けられたんだけど…と戸惑ったHから電話が来ました。
濡れた髪の毛を乾かす間もなく、慌てて浴衣を着て駅まで迎えに行き、そのまま近くのバーでサッカーの応援をすると言う事になってしまいました(笑)
遠くで祭太鼓の音が聴こえたけれど、わたしはHが同僚の方と楽しげにサッカー観戦をしている姿を見て満足していました
Hは後から、
璃子が髪の毛が濡れているからと断ってくれると思っていたのに…。
と不服そうでしたけど(笑)
そうそう。
また別の日は、Hの月1回の休日(わたしが行かなければ、仕事をしちゃう人)に、上司に馬券を買って来てと言われ、でもそこにわたしは連れて行きたくないから、留守番しててくれる?と訊いて来ました。
え、どうして(`へ´)
貴重なHとの時間なのに、留守番なんて嫌ですっ
馬券売り場も行ってみたいもん。
と言い張り、ついでに生まれて初めて馬券を買うと言う事も体験しました🐎
タバコとお酒臭くて、Hがいなかったら絶対に近付けない場所だけど、生まれて初めての経験にワクワクしました
「やっぱり璃子はこう言う所は似合わないし、連れて来ちゃいけなかった。
悪かったね。」
と言うHでしたが、わたしは二度と来ないであろうこの場所の人間観察も出来たし、ま、まぁ、若干の緊張感からHの腕をガッチリ掴み迷子にならないよう、只でさえ目ヂカラ強くて怖いと言われる目を瞬きさせずに周りを 威嚇
見渡し、楽しませてもらいました
Hはそんなわたしを真剣にお嫁さんにしたいと思い始めました。