畠山美由紀「わが美しき故郷よ
 
 10年前のソロデビュー作を初めて聞いたとき、自分の聞きたかった(日本の)女性シンガーにやっと出会えたと思った。オリジナル曲も素晴らしいが、トッド・ラングレンやザ・バンドとか自分好みのカバー曲も多くて、ユニットのポート・オブ・ノートやダブル・フェイマスとか、彼女の参加した物は、全部聞くようになった。
 でも、そう言えば最近聞いていなかったなぁと思ったところ、昨年暮れに新譜「わが美しき故郷よ」が出た。ファンだったので彼女が気仙沼出身であることは知っていたが、3月11日の震災後、改めてそのことを思い出したことはなかった。そして「わが美しき故郷よ」を聞いてそのタイトルの持つ意味を理解した。
 このアルバムのテーマは全て「わが美しき故郷よ」というタイトルに集約されている。何かのメッセージがあるわけではない。しかし故郷とそこに住む人々に対する深い想い、子供時代に親しんだ音楽への愛情、亡くなってしまったものへの鎮魂と祈り、そして再生への希望が、美しい音楽として昇華されている。
 詩の朗読から繋がるタイトル曲は特に素晴らしい。