家族を愛する者達へ
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地獄の先に見えるもの4

「おは」

その着信に私が先に気付かずにいたら、きっと夫は優しく返信し、私が悟る前に削除していた事だろう。


そんな小さな秘事が数回続けばきっと夫は慣れて来て、また雌豚の誘惑に乗ってしまっていただろう。


ラブホライターを放置した事は致命的なミスのはずだったのに、咄嗟に吐いた嘘だけで軽くスルーし、その後は私と顔を目を合わさない様にして過ごし、私を2週間も放置して、己の罪悪感も放置して、雌豚には何も話さずに背徳の関係と高揚感を保ち続けた夫は、車載GPSの存在と、子供用GPSの動きに抗えず、初めてその不倫を終わらすための行動を起こした。


私が何もアピールしなければ、子供達の春休みが終わり通常シフトに戻った頃、きっと夫は「今日行ける?」と雌豚にコールしていたと思う。


私が車載GPSの存在を隠し、夫を大嫌いなまま泳がせていたなら幾度となく情事を重ね、この先も何年も不倫を続けたに違いない。


終わりを告げたはずの雌豚と、その後も出勤の重なる深夜に行動を共にしていた夫を、毎日の思いを雌豚にだけ共有していた夫を、どう信用しろと言うのだろう。


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夫と雌豚がプライベートに使用していたトークルームに「おは」と着信があった日、スマホをスピーカーにし「説明して!」と詰め寄った時の夫の表情は、絶対に口を割らない、向こう側に悟られたくないと言う思いと、バレない様に努力して来た秘密が明かされた今、私が怒り狂っているこの状況を雌豚にどう説明しどう誤魔化せば良いのかと焦っている様に見えた。


雌豚も夫に日々の思いを共有したくてメッセージして来たに違いない。


それは夫にとって、不倫発覚から2ヶ月経過し、私とすっかり和解した様に見えた矢先に起きた事で、閉じる気なんて更々無かった雌豚との秘密の部屋ではお互いに関係を切る気などなく、いずれまた不倫を再開しようと暗黙の内に放置していた故の焦りだったに違いない。


私からの電話を受けた雌豚は、やっと夫との関係を見限ったのか、翌日は他の男にちょっかいを出しに行っていたと夫は私に話した。

その姿を見て夫はどう感じたのだろうと思うと胸が締め付けられる。


「浮気は浮気だよう…」と言った。

不器用な夫は自分の感情を上手くコントロールしようなどとはしない。

面倒な感情には蓋をするだけ。


夫と雌豚の関係が一旦、終止符を打ったのは3月8日朝の浮気発覚から約2ヶ月経過した今だった。


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3月24日月曜日

夫の車の助手席にビールをぶち撒けてから初めての夫の休日、娘が私に「パパがごめんねって言ってたよ。遊んでるだけだよって言ってたよ。」と話す。


3月28日金曜日

娘の病院の予約を送信した後の返信に既読無視をしていたら、次に送られたメッセージは“ママ“に謝罪する夫の言葉だった。

ママを裏切って、ごめんなさい🙇‍♀️馬鹿なことしました、後悔してます。ママとやり直したいです。


4月4日金曜日

浮気発覚一月経過のお知らせをした後に来た返信には、「ママを傷つけたこと、残りの人生をかけて償っていくつもりです。」と書いてあった。


4月6日日曜日

起きて来た夫に声を掛け、家族皆んなで桜を観て買い物しブランチをした。


結局、直接行動を起こしたのは私の方。いつもそう。

私の起こすモーションに対する反応はいつも男らしくて格好良くて、その姿は『動かざる事山の如し』な漢なのです。


知り合ってからずーっとそうだから、その焦ったさにイライラする事嵐の如くな私なのだけれど、この年になってもその男前で単純な性格がとても愛おしい。


---時折


私の身体に巣くったヘドロは麻薬の様に私を興奮させ、苦しみを与えて傷付けて、涙を見せる。

そうやって私は高揚し、潤い、また夫に恋をする。


私がこうして苦しみ続ける事を夫は地獄だと言う。


不倫の味を知ってしまった夫が残りの人生を私だけに費やすなんて思わない。


「浮気は浮気だよう…」と言った。

その背徳にある高揚感は誰しも忘れ難いものだと思う。

隙だらけで軽率な夫の事、必ず第二、第三の雌豚が現れる。


私がこの不倫を思い出す事が殆どなくなり安心して眠りに付ける様になった頃、地獄の先に光を見た夫はまたその誘惑に従ってしまうに違いない。


何が地獄だ。

都合の良い言葉だな。


私が楽しく生涯を終える為に、ヘドロの沼に夫をずっと沈めておこう。

愛してる、と思いながら。

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