彼は物音を立てないよう,細心の注意を払って立ち上がった。それでもまだ物陰には隠れている。仮にアイツがこの屋根裏にいても見つかる恐れは少ない。


外よりも暗いこの屋根裏の中,唯一光が差してくる階段の方を覗く。


アイツはどうやらいないようだ。


少しだけ落ち着いたところで,物陰から足を一歩踏み出す。板張りの床のはずなのに,液体を踏んだような感覚があった。





それは血であった。


ビール瓶が転がっている。


その上を蠅が2匹飛び交っている。


心臓は落ち着かない。


けれど、


行くしかなかった。


アイツは,どこだ。


何故現れない。気配すら感じない。


何だったんだ。


時間には遅れたから,恐らく奴は現れないが…


少し楽な姿勢をとるため,彼は神経質に,床へと手を置いた。