私は世の中の不条理を沢山経験しているとはとても言えないがそれでも人生を振り返ってみて嫌なことはたくさんあった。

それを振り返ってみるとほとんどは人間関係に関することであり、とは言え私自身も他人にとっておきの不条理を与えているのかもしれない。

だから、時には歯を食いしばりながらも、時には柳のように揺れてかわして生きていくことも必要なのだということを学んだ。

時はすぎる。誰もが経験する死に向かってただ一刻一刻過ぎていくだけだ。

人間界の不条理に比べれば、自然界の不条理は少ないのかもしれない。

しかし、それは我々の生活があまりに人間界に重点を起きすぎているからであり、人の社会の密度が濃くなる分、自然界との関わりが希薄になるということでもある。

もちろん、自然災害の類は我々にはもはやどうしようもなく、地震、津波、火山の噴火、洪水などは言うに及ばず、干ばつ、天候不良による作物の育成障害、台風による交通機関の混乱、夏の熱帯化による体調不良などは殆ど予測困難なもう一つの不条理である。

しかし私が今どうしても不条理だと感じているのは蚊による無差別というより差別的なテロリズムである。

彼らは私の生き血を狙い近づき、チクリと刺す。何度も何度も刺す。

隣の人は決して刺さないのに。

私はそのうち痒みにのたうちまわり、自己の統制を忘れ、蚊に対する殺意でいっぱいになる。

蟻だって踏まないようにしているくらい殺生は嫌いなのに。

私は彼らに殺意を持っている。

正直に言おう。絶滅して欲しい。