部屋から見える海は
窓じゃ狭くて収まりきらなくて
静かな波音は
荒れた僕の心を沈ませてくれる
ここに越してきてもうすぐ1週間が経つ
未だに同居人らは帰ってこなくて会えていない
ミンソクさんはお店の合間に何度も来てくれた
「うお!綺麗になってる!もしかして全部掃除してくれた?」
「時間が空いたので。やることもないし、片づけちゃいました」
「ありがとな。なるべく俺も時間ができたらやるし、アイツらにはしっかり言っとくから!無理にしなくていいんだからな」
「ありがとうございます」
会って間もないのに、なんだかお兄さんのようなミンソクさん
ほんとにやさしい人なんだな
「ギョンスも仕事あるだろうし、自分のことだけでいいんだからな」
「、、、わかりました」
仕事、、ね
明日からまたはじまるけれど、、、
、、、まぁこんだけ帰ってこない人達ならプライベートにまで気にはしないか
って偏見かな
ミンソクさんが帰った後も残りの片づけをしていたら、いつの間にか時間が経っていて、窓の外は夕暮れ時になっていた
ソファに寝転んで窓の外を見つめる
リビングの窓は大きくて、パノラマのように海に吸い込まれていく夕日を眺めた
そのうち眠気に誘われていたみたいで、いつの間にやら僕は眠ってしまっていた
ガチャ
「あ〜つっかれたぁ!!」
「おい!セフナ!キャリーケースのタイヤくらい拭いてから入れよ。床が汚れちゃうだろ」
玄関の扉が開くと同時に、わいわいと騒がしく入ってくる長身の男組3人
くりくりとした丸目の男に指摘され、渋々近くにあった雑巾タオルでタイヤをさっと拭くピンク頭の青年
ふたりを置いてさっさとリビングへと廊下を歩く褐色肌の男
リビングの扉を開けて一歩入ると、見違えるほど整理整頓された部屋に足が止まる
「え?なにこれ!めっちゃ綺麗になってる」
「まさかミンソギヒョン?お店あったのにここまでしてくれたの?めずらしくない?」
「うお!見てよ!洗濯物まで畳んである!」
「、、、でも、どれがだれのかわからなくて衣類事に別れてるし、混ざっちゃってるじゃん」
「それは仕方ないだろ〜ヒョンだって忙しい中やってくれたんだろうし」
「、、、てかミンソギヒョンって今まで洗濯物までやってくれましたっけ?」
「、、、、そういえばないな。それくらい自分でやれ!って言われてたような、、」
ピーチクパーチクと丸目の男とピンクヘアの青年が騒ぐのを無視して、褐色肌の男はソファへと目をやると、小さく体を丸めて眠る細身の青年を見つける
「、、、、だれ?」
知らない人に警戒しつつも青年に近づくと、開かれたら大きいであろう瞳が閉じられている顔を覗き見る
月の明かりで目元が微かに光って見える
「、、、?泣いてる」
寝ているのに悲しそうな表情に見える青年の寝顔に褐色肌の男はじっと考え込む
「ジョンイナ〜?うおっ!だれ?!」
「チャニョリヒョンうるさい。起きる」
チャニョルと呼ばれる丸目の男はジョンインに睨まれ慌てて口を手で抑える
その横からピンク頭の青年が顔を覗かせ、何かを思い出したように「あ」と声をだす
「そういえば1週間くらい前にミンソギヒョンから連絡ありましたね。新しいルームメイトが来るって」
「おい、セフナ〜なんでそれをもっと早く言わないんだよ〜!」
「だって衣装チェック中に連絡きたんですもん」
「いやいや、だとしても大事なことだろ〜」
なんて言いつつ強く叱らることは無く、次は気をつけろよ〜と末っ子セフンを甘やかすチャニョル
「さて、こんなところで寝てたら風邪ひいちゃうし、かといって勝手に部屋に入るのもな〜」
チャニョルが腕を組んで悩んでる間に、どこからか取り出した毛布をかけて抱きあげるジョンイン
「お、おい、ジョンイナ!」
「ヒョン、手ふさがってるからドア開けて」
有無を言わさないというジョンインにチャニョルは諦めてリビングや眠っている彼の部屋の扉を開ける役を引き受けた
彼の部屋には何もなく、床には月に照らされたいくつもの毛布が転がっているだけであった
「この人布団もないの?」
後ろから着いてきたセフンが眉を寄せる
だれもその問いかけには答えないが、ジョンインはそっと彼を降ろし毛布を掛けてあげる
訳ありな感じの青年は、起きる気配はなかった
「、、、ここは彼のプライベートだ。俺たちはいつまでもここにいちゃいけない」
チャニョルが促し3人は部屋を出る
閉じた扉の先を、これから彼らが見ることは無かった
、、、あの日がくるまでは。
……To be continued