俺は何も知らなかった。
気づかなければよかった。
もう、いい加減やめてくれ。
もう、そんな言い訳聞かないよ。
夜遅くに帰ってくるお前から匂う、お前でない誰かの匂い。
日が経つごとに変わるお前の表情。
気づいてしまった、首元にある、俺のではない口づけの跡。
なあ、俺が知らないとでも、
気づかないとでも思ったか?
友だちに会えば、聞かされるお前の噂。
怒る顔に心配する顔。
俺は諦めたんじゃない。
お前の行動に呆れ果てたんだ。
俺ではない人と腕を絡めて、
俺ではない人と唇を重ねて、
俺ではない人と見つめ合う。
もう、そろそろいいだろう?
罰が降ったのは俺じゃないよ。
お前だよ。
悪いけど、俺は泣かないよ。
女じゃないから。
喚いたり、罵ったりもしない。
弱くないから。
そのかわり、
笑ってあげる。
お前がすきな可愛い笑顔で。
返してあげる。
お前がくれた愛を、すべて。
「さよなら、ルハン」
俺の知らない人とベッドの上、
放心状態なお前の目の前で、
俺の手元から落下する。
お前がくれた愛。
それからルハンとは会っていない。
電話番号も、住所も変えた。
お前とお揃いで買ったカップも
ブラシもシャツも、ぜんぶ捨てた。
「ミンソギヒョン、本当にいいの?」
俺を気遣ってくれるセフナ。
「ああ、いいんだ」
俺だけが知らなかった。
すべて。
気づかなければよかったよ。
もう、いい加減やめてくれ。
もう、言い訳なんか聞かないよ。
それでも、まだ好きなのは
俺は本当に、お前のこと愛してたよ。
ルハン……。
end
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