ステージでパフォーマンスを終えて裏へと退がる
入れ違いでBOA先輩とばったりあった
「セフナ!今日どうしたの~?肩に力入りすぎよ~!笑笑」
すごい……さすがBOA先輩
こんな後輩の些細な変化に気づくなんて
みんなの先輩であり、SMのオンマのような存在だなあ
「今夜、大事な話があるんです」
「大事な話?」
「はい」
「あら、なーに?そんな嬉しそうな顔してぇ」
ばんばんと僕の肩を思いっきり叩くヌナ
………痛い
「今夜、僕の気持ちを伝えようと思うんです」
大好きなタオ
きみへ
[ すきって言って ]
タオが待ってる部屋の前でバクバクとうるさい鼓動を抑えようと深呼吸する
……もうどれくらいこうしているのだろうか
僕ってもしかして思ってたよりチキンなのかも知れない
タオが僕をすきでいてくれてることはわかってる
だけど、それは
メンバーとして
兄弟として
それとも?
それをはっきりさせるため
僕らの関係をはっきりさせるために
告白するって決めたんじゃないか!
なのに……はぁ~…………
落ち着け!
まだ耳まで響く鼓動
それに耳を澄まして
大分落ち着いたときに
部屋の扉を開けた
「タオ、あの……?」
決心して扉を開けたら
そこにタオの姿はなく、そのかわりベッドの上に得たいのしれないものがシーツにくるまっている
もちろん
それがタオだとすぐにはわかったけど
「タオ?なにしてるの?」
ゆっくりベッドに近づくと、びくりと揺れた体
僕から遠ざかるように壁側に逃げるタオ
なにしてるの?
どうして
「泣いてるの?」
ぐすんと鼻を啜る音
ベッドに乗って頭から被ってるシーツを剥がすと、タオは体育座りをして縮こまって泣いていた
「タオ?どうしたの?」
タオはただ横に顔を振るだけで顔を見せてくれない
「なにか嫌なことでもあったの?」
「…………」
「タオ、こっちを見て」
やわらかな髪に触れる程のキスをして
あやすように優しく囁くと
ゆっくりと涙でぐしゃぐしゃの顔を上げた
ぐしゃぐしゃなのに、綺麗な泣き顔
その瞳は何に対してなのか
不安な色で揺らめいている
「ねぇ、タオ
今から僕が話すことを聞いてほしいんだ」
タオは黙ったまま僕をじっと見つめる
「僕ね、今まで人をすきになったことがないんだ。僕の外見しか見ない子ばかりですきになることなんてなかったんだ。
だから、人に執着することも、深く関わろうともしなかった。
なにも知らなくてもいいと思ったから。
……でも、この事務所に入ってしばらくして、すごく綺麗な人に会ったんだ」
長身で見た目はちょっと怖い感じなのに、話すととてもやわらかくて愛想のある子で
「純粋でまっすぐな人に会って、一瞬で惹かれたんだ」
その時は気づかなかったけど
僕はきっと、きみに一目惚れしたんだ
「だから、ずっと頭から離れなかったし、また会えたときすごく嬉しかった」
いまだにふにゃふにゃだけれど
初めて会ったときよりも上達した韓国語
不慣れな生活に僕を頼ってくれた
「その人は我が儘で、怒りやすくて、泣き虫で
、かと思いきやすぐに笑顔になって、くるくるといろんな表情になってみんなを惹き付けるすごい人なんだ」
どんなときも、どんなとこでも
キラキラ、キラキラ、輝いてるキミ
「すぐに勘違いして、落ち込んで、熱も出しちゃうけど、まっすぐにぶつかって来る人」
そっと涙で濡れた顔を両手で挟む
愛しい、愛しいキミ
みんなのキミじゃなくて
僕だけのキミでいてほしい
「タオがすきだ」
なにで泣いてるのか
なにに不安になってるのか
わからないから、わかりたい
タオのことならぜんぶ
ぜんぶ知りたいんだ
だから、教えて
きみの本当の気持ちを
「タオ、言って」
後ろに離れてくきみを
ゆっくりと追いかける
もう、逃がさない
「言って。僕のこと、すき?」
ねぇ、タオ
そろそろ言ってよ
僕のこと好きって
もう我慢なんかできない