[ 僕ばっかり…… ]side X
最近タオが変だ。
メンバーの前では明るく振る舞ってるけど、ふと隅っこで暗い顔をしてるときがある。
そして、明らかにセフナを避けている。
ルハニに聞いてみたけど、セフナ本人もわかってないって言ってた。
前から甘えてくることはあったけど、それが多くなった気がする。
ルハニも俺と一緒にいれないって文句言ってたけど、タオが変だとわかってるから本人には何も言わないでいる。
(そういうとこ、いい奴だよな)
「タオ、」
「ん~?なあに?シウちゃん。」
「こっちおいで。」
大型犬のようにするりと抱きついてきて「シウちゃんふにふに~!」とからかう。
「タオ、部屋に行こっか。」
「え?」
「話したいことがあるから、来て。」
「……わかった。」
真剣な俺に気づいてくれると、大人しく俺に連れられて部屋に行く。
「タオ、おいで。」
扉付近で立ったまま近づかないタオに、自分が腰掛けたベッドの空いたスペースを叩いて座るように呼びかける。
タオは躊躇いながらも大人しくそれに従って俺の横に座る。
タオは俯いたまま何も言わない。
どうやら俺がこれから話すことが言わなくてもわかってるようだ。
いや、初めからわかってるんだろうな。
だから俺に呼ばれて黙ってるんだろうな。
「タオ、単刀直入に聞くよ。」
タオはこっくり頷く。
「セフナとなんかあった?」
"セフナ"のワードでタオの肩がビクリと跳ねたけど、タオは首を横に振った。
「タオ、正直に話して。」
タオは潤んだ瞳を揺らめかせながら唇を噛んで泣くのを堪えていた。
「怒ってるわけじゃないよ。ただ心配なだけなんだ。いっつも無理して笑わなくていいんだよ。空元気なタオでいてほしくないんだ。」
そう言うとタオの眼から溜まっていた大粒の涙がポロポロ、ポロポロ出てきた。
「っ、あんね、ひっく、、僕、、、セフナのこと、がね、すき、、ひっく、なのに、、ふぅっ、」
「うん。」
タオの丸まった背中を撫でて落ち着かせながらゆっくり話すタオの話に耳を澄ます。
「セフナは、、、ひっ、、るぅちゃ、、がすき、、、だ、、からね、、僕ばっか、好きで、、っ」
「うん。」
「もう、、つら、ぃの、。だから、僕から、、離れた、、、のに、」
「うん。」
「やっぱり、、すきで、すきで、、ひっく、、セフナ、、一緒に、いれないの、、ツラ、、ぃ、、ふぅっ」
タオは俺のお腹に顔を埋めて泣き崩れた。
タオのツラい気持ちは痛いほどわかる。
けど、タオはものすごい勘違いをしてる。
ねぇ、タオ。
ほんとはセフナの好きな人はるぅじゃないんだよ。
「タオ、なんでセフナはるぅが好きだって思うの?」
「僕、、知ってるの、、僕には、ひっ、見せない顔で、、笑う、こと、、ひっく、、ぅ」
違うんだよ、タオ。
ルハンと話してるとき、セフナが笑うのはね、タオのこと話してるからなんだよ。
タオは知らない。
表情があまり変わらないセフナが、タオのことになると喜怒哀楽がはっきりしてること。
タオは知らない。
いっつもステージ上などでセフナが見てるのはるぅじゃなく、タオ自身を見てること。
タオは知らない。
どれだけセフナがお前を好きなのか。
でも、他人の俺が言うことじゃない。
セフナ自身がタオに伝えなくちゃ意味がない。
俺ができることは、今、こうして泣き崩れたタオを落ち着かせて見守ることしかしてあげられない。
ごめんな、タオ。
泣き声が止まり、静かになった タオを覗くと、顔を涙でぐしゃぐしゃにして泣き疲れて眠ってしまっていた。
タオを起こさないようにベッドに寝かせてあげると、カチャと扉の開いてそこに立つ人物に苦笑いする。
肩をポンと叩いて入れ替わる。
静かに扉が閉まってお腹あたりが冷たくて見ると、俺のシャツはタオの涙でびっしょり濡れていた。
「はい、シウちゃん。お疲れさま!」
「ん。ありがと。」
出てきた俺にルハンが新しいシャツを渡してくれた。
「俺らのマンネは世話がやけるね。」
嬉しそうに笑うルハンに俺もつられて頬が緩む。
「まったくだ。」
ルハンと手を繋いで俺たちの可愛いマンネたちの部屋から離れた。
どうか 想いが伝わりますよーに。