side B
「すきな人思い浮かべて歌えばいいんじゃないの?だって、これ、告白のようなモノだよね?」
タオにそう言われて、なぜかチャニョルがぱっと浮かんできた。
「ねぇ、ベク。なんで、俺を見たの?」
チャニョルと視線が合って、心臓が跳び跳ねるくらい驚いて、恥ずかしくて顔に熱をもちはじめた。
自分でも、どうしてなのかわからない。
「見てねーよ!アホか!」
誤魔化してみるけど、チャニョルは真っ直ぐと俺から視線を反らさない。
やめろ、見るなよ……。
俺から反らしてタオを見ると、じぃっと目を細めてなにか探っているように俺を眺めていた。
「あー!もう!ふたりしてなんだよ?!」
「ベッキョンはチャニョルがすきなの?」
俺はときどき思う。
タオのこのストレートにズバッと言えちゃうところがほんとに凄いと。
「メンバーなんだから、そりゃそうだろ?」
俺の心臓は不規則に鼓動を繰り返して、俺はなぜか焦るばかり。
平静を装うのも、見透かされないか難しい。
「タオが言いたいのはその好きじゃなくて!」
「タオ、ヒョン苛めるなんて後でなにされるか知らないよ?」
「タオ、いじめてないもん!」
「僕は助けてあげないからね。」
「それはイヤ!」
いつから居たのか、セフンが後ろからタオの肩に手を置いて回避してくれた。
「ベッキョニヒョン、入ってくださいって言ってましたよ。」
「あぁ、わかった、ありがとう。」
セフンの思いがけない助け船に乗ってその場から逃れることができた。
席をたってからも、チャニョルの顔が見れなくて、わざと目を合わせないようにした。
歌に集中しようとしても、さっきのことが頭から離れなくてうまくできない。
ちらりとチャニョルを見ると、ずっとこっちを見ていたのかすぐに視線がぶつかった。
チャニョルはにっこり俺に笑いかけると、「ファイティン!」とガッツポーズをして見せた。
"好きな人思い浮かべて"
どうしてチャニョルなのかはわかんないけど、いつも一緒にいるからそれでなのかもしれない。
友だちへ送るには愛がこもってる歌詞だけど、タオの言うとおりに歌ってみようかな。
イヤホンを片耳に押し付けて、準備万端の合図を送る。
「じゃあ、まずは最初のパートの部分からね。」
♪~♪~♪~♪
音楽が流れて目を閉じる。
深く深呼吸をしてから、ゆっくりと瞼を開けてチャニョルを視界に写した。
チャニョルはじっと俺を見ていた。
自分のパート部分の全部を、ずっと視線を交わしたまま歌った。
チャニョルは1度も反らさないで見ててくれていた。
どきどきと心臓はうるさかったけど、"チャニョルに"と歌っていると自然と歌えて気持ちよかった。
歌い終わってみんなのもとに戻って来ると、チャニョルはぎゅうっと俺を抱き締めた。
「やっぱ、ベク凄い!」
ドキン!
"ベッキョンはチャニョルがすきなの?"
ああ、もう、なんでだよ……?
なんで、
こんなに、
心臓 うるさいんだよ……?
チャニョルに抱き締められると安心するけど、
チャニョルに抱き締められると落ち着かない。
「はいはいはい、わかったから、離れろ。」
チャニョルの胸を押して離れた。
この鼓動を知られたくなくて。
俺ってば、どうしちゃったんだよ?