幻玉
幻玉(?)の花も終わった。この人の素性についてはその後もあれこれ調べたのだが、現時点では「徒長気味だから妖玉っぽく見えてしまう幻玉」という解釈でいいような気がしてきた。ともあれ今夏、我が家で容赦なく直射光栽培したことによって、次回の脱皮時にもっと幻玉らしくなる、といった良い変化があればと思っている。
春桃玉
ディンテランタスのもうおひと方、春桃玉。以前書いたように、リトープスとは違って異常事態ではないらしいのだが葉が2対になり(※ディンテランタスの場合、2対まではOKらしい)、そのまま現在に至っている。この人は結局、花は咲かせなかった。というより、そのエネルギーを2対化するために使った、ということなのだろうか。少々前途に不安はあるが、とりあえずは元気に育っている。この写真は、また南側の内葉が大きくなってきてしまったので、再び鉢回しをしたところ。ディンテランタスらしい、いい具合の「顔色の悪さ」だ(笑)。
ちなみに両者とも、リトープスと同様に酷暑期でも強烈な直射光を当てて(ただし夕方以降に)灌水やシリンジをしてきた。うちの場合、(どれほどの効果があるかは何ともいえないが)岩石栽培+水上栽培+二重鉢という三重の高温対策を施してあるとはいえ、夏季休眠などさせなくてもちゃんと育っている。それこそカンカン照りがしばらく続いた時期などは、毎晩シリンジして表皮や表土が水滴だらけになっていたものだ。それでも腐ったりなどしていない。というわけで、改めて世間(というか多肉界)に問いたい。このディンテランタスというメセンの一体どこが、高温多湿に弱くて脆弱だというのか。ディンテランタス栽培の真の問題点は、そこではないのだ。本当の問題点は、リトープス以上に強烈な直射光が必要なのに実際にはそれが足りていない、この一点に尽きるといっていい。ディンテランタスに関する海外の書籍やHPにも、とにかく強光線を当てろ、と書いてある。場合によっては「bake」という表現まで使われているくらいだ(笑)。もちろん、我が国には極端な高温多湿というハンデがあるわけだが、メセン類の基本的栽培手法とされている夏季休眠が「前向きな解決策」であるとは決して思えない。問題の本質は(他のメセンにもいえることだが、とりわけディンテランタスにとっては)光量不足なのである。遮光などするから、かえってディンテランタスが衰弱するのだ。少なくとも、現時点の私はそう考えている。
さて、最後に老婆心的コーナー(笑)。余計な心配かもしれないが、このブログを途中から見た方々は「この岩石翁なる人物は、マニュアルを無視した無茶苦茶な方法で(ディンテランタスや)リトープスを育てている」と誤解(というか、旧来の栽培マニュアルに背いているという点は事実だが…)してしまうかもしれない、と最近ふと気になった。なので、時々ブログの記事の末尾に、従来の栽培方法の誤りを正すべく先人たちが切り開いてきた「新たなリトープス栽培法」の簡略説明を添えることにした。以下は、私が先人たちの貴重な先例から抽出し、実践してきた要点を自分なりにまとめたものである。
【新たなリトープス栽培法の根拠と要点】
①例外はあるが、リトープスやその他のメセンが「冬型(冬生育型)の多肉植物である」という従来の認識は誤りである。彼らの大部分は、夏に雨が降る地域に自生している。したがって当然、大部分のリトープスは春から秋にかけてが生育期となる。
②リトープスは休眠などしない。冬や酷暑期など生育が鈍る時期はあるものの、コノフィツムなどのように明確な休眠期はないメセンである。従来のいわゆる「夏季休眠」は、自生地とはかけ離れている我が国の気候に対処するために編み出された、リトープスの生育サイクルを無視した対処法に過ぎない。リトープスの多くは夏が生育期なのだから盛夏でも遮光や断水をする必要はなく、むしろ、生育期に光と水を断ってしまう夏季休眠は有害であると言っていい。
③したがって、一部の例外を除いて遮光は必要ない。むしろ、ただでさえ晴天率その他の日照条件が自生地より劣っているため、十分な光量が得られないことの方が問題である。我が国の異常な高温多湿への対策は講ずるべきだが、その手段として遮光することで光合成のエネルギー源を減らしてしまうのは、本末転倒である。
④断水も必要ない。ただし、気温の高い時期は、必ず夕方以降に灌水するようにしなければならない。酷暑期には、この時間帯にシリンジするのも有効である。また脱皮期間中も、ある程度の水分補給は必要なので、微量灌水は続けるべき(この時期に異常脱皮を起こしやすい種類は例外)。
⑤リトープスは根際が見えるほど浅植えにしないと腐ってしまう、というのも事実に反する。本来は頂面だけを地表に出す形で埋没して自生しているのが自然な姿であり、逆に、本来地中にある側面は頂面ほど強光線に強くないのだということを認識すべきである。うちでは全てのリトープスをなるべく頂面だけ出す形で深植えにしているが、それが原因で腐死したことは今まで一度もない。
⑥脱皮殻(旧葉)を取り去るようによくいわれるが、その必要はない。自生状態ではむしろ、脱皮殻によって側面が保護されているのである。前項の深植えやこの脱皮殻を残すことで腐死したりカビが生えたりするとしたら、次項の栽培環境や管理体制の方に問題がある。
⑦腐死や徒長など、リトープスに起きる様々な問題の大部分は、日当たりの悪い場所や風通しの悪い場所で育てていることに起因するといっていい。日照と通風がある程度確保できない環境では、残念ながら、まともに栽培することは不可能な植物である。