今日は、いわゆる「蒸し作り」の話。読者の皆さんはよくご存じと思うが、設備が整った本格的な温室で遮光しながら高温多湿の環境をずーっと保って育てるという、業者さんたちや上級者の方々がよくやっている方法である。これをやると促成栽培的にみずみずしく見栄えの良いサボテンが早く作れるので、高級ラインを中心とする多くの種類はこの方法で育成されていると言っていいだろう。もちろん、設備面その他で制約のある大部分の一般栽培者にとっては、これと同じことをするのは極めて難しい。こういうサボテンを買って帰って普通の家の栽培環境(苦笑)で育てると、ものによってはこじれたり、うまく育たなかったりすることになる。環境が激変するのだから、当然のことだろう。
うちなんかは特に、メセン中心でやっている関係で寒冷紗など張らないし(※ロホホラやガステリアなどは、もちろんなるべく直射光の当たらない場所に置いているが)通風第一でやっているので、蒸し作りなんてそもそも不可能である。なにしろ、厳寒期の避難所である第二置き場でさえ、普通に隙間風が入る(というか、あえて少し入るようにしている)始末なのだ(笑)。
ところが厄介なことに、蒸し作りでないとなかなかうまく育たないサボテンがあったりする。兜や牡丹類(※初心者のために一応説明しておくが、これはギムノカリキウム属の牡丹玉のことではなくてアリオカルプス属のサボテンのこと)などがその代表例である。で、結局、うちにあった兜は、私なりの勝算があってあれこれ手を尽くしたつもりだったが、うまく育たないまま腐死してしまった。冬場には室内に取り込んで加温までしていたのだが、要するに一年を通して兜に適した蒸し作り的な環境を作ってやれなかったことが敗因と思われる(岩石栽培も兜には合わなかったかもしれないが…)。ちなみに、兜と自生地域がかぶっている白ランポー(※普通のランポー玉とは完全に別種)も持ちこたえられなかった。おそらく同じ理由によるものだろう。ある先人の見解によれば、サボテンの中でも兜と牡丹類は「熱帯植物」であるといっていい、という。そして、これらを育てるために特化した温室では、逆に他の種類のサボテンがうまく育たなくなるのだ、とも…。具体的には、洋蘭などが栽培されているような、遮光されて風通しのない、ムッとした感じの温室を想像すればいいだろう。そういえば、以前訪問したことのある業者さんの兜中心の温室も、リトープスだったら即死するほど(苦笑)ムシムシしていた。確かにうちでは、兜とは自生地が全く異なる(=兜の自生地ほど特異な気候ではない)ランポー玉や般若は、冬場でも加温なしの第二置き場で問題なく育っている。負け惜しみのようになってしまうが、うちみたいに環境に恵まれない+蒸し作りができない設備+栽培方針のところでは、兜はマトモに作れないのではないかと思う。ただ、そうはいっても兜はとても魅力的なサボテンではある。諦めきれずにこの件についてはいろいろ調べてみたのだが、結論から言うと牡丹類ならまだ脈はある(=蒸し作りでなくても育てられる可能性がある)ようなのだが、兜についてはやはり諦めざるを得ないようだ。多分、将来実家(※現在の居住地域よりも温暖)に戻って専用温室でも建てない限り、兜とは縁がないまま終わるのだろう。ただし、もしそれが叶って兜とのご縁ができてしまった場合は、それと引き替えに家内とのご縁がなくなりそうだけど(笑)。
まあ、そもそも設備その他もろもろ余裕がないし、一番こだわって最優先で育てているのはリトープスとディンテランタスだ。そんな私に付き合って頑張ってくれているサボテンたちもたくさんいるが、二の次、三の次になっているため、夏場の日照に無理がある第二置き場に置かざるを得ないことを申し訳なく思っていた。だから今回、無理は承知でメセン置き場の前に露天の置き場を作ってみたわけだ。これで少しでも作が上向くといいのだが…。※念のためしつこく言っておくが、彼らは半日陰からいきなり直射光下に出したわけではない。いずれも、時間が短いなりに直射光栽培を続けてきたものばかりである。
アデニウムの花々
話は変わるが、次々に蕾が膨らんで咲き続けているアデニウム。数えてみたら、少なくとも20以上は花と蕾があった(喜)。まさしく「花盛り」である。置き場を変えたこともあるかもしれないが、去年までとは雲泥の差だ。せっかく花が咲いているのに昨日まではしばらくグズついた天気だったが、今日からまた日差しが出てカーッと暑くなるらしい。これで勢いづいて、更に元気よく咲いてくれることだろう。ちなみに、今の時期のアデニウムは(うちは岩石鉢だということもあるかもしれないが)、ほぼ毎日の灌水でよい。この人は兜と同様に寒いと死んでしまう多肉だが、兜ほど気難しくはないので、冬場の加温さえしっかりしてやれば問題なく育つ。その一方で逆に、かなりの高温多湿でも死ぬことはないと言っていい。なにしろ、主な自生地は中東地域であるものの、現在流通しているものはほとんどがタイで(!)生産されているのだ。