岩石翁の多肉ブログⅡ

岩石翁の多肉ブログⅡ

メセン栽培を主軸として、多肉植物の「岩石栽培」という新手法を実験中。その記録です。

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 幻玉は、もうダメだ。今朝見たら、更に萎縮が進んでいて、株元がひどく縮んでいた。経験上、この状態になってしまったメセンは、もう助からない。株元、すなわち茎の部分が、既にほとんど死んでいるのだ。誠に残念ながら、ほぼ枯死したものと判断せざるを得ないだろう。

 

 無念である。原因は、正直のところ、よく分からない。私としては、水切れさせてしまった可能性くらいしか思い当たらないが、それさえも本当かどうか分からない。あるいは、(これは解決不能な問題ではあるが)住宅地にあるが故の日照時間の短さが影響しているのかもしれない。いずれにせよ、原因不明ということは、要するに私の栽培理論や栽培環境に何らかの問題点があるということだ。ディンテランタス栽培に関しては、改めて勉強し直さなければならない。

 

 今のところ、(多肉の種類にもよるが)岩石栽培は軌道に乗っていると言っていいし、リトープスたちも問題なく育っている。なので、大筋では間違ったことはしていないと思っているのだが、それでもディンテランタスがうまく育たず枯れてしまうようでは問題だ。勉強し直してから、改めて出直させていただくことにしたい。

 

 さて、最後にちょっと身の上話。お恥ずかしい話だが、実は、何年か前に大変大きな不幸に見舞われ、その後もあれやこれやとトラブルが続いたため精神的にひどく疲れ果て、心のバランスを崩してしまっていた。心が折れきったというか何というか、とにかくそれまでの自分ではなくなってしまっていた。本来はかなり多趣味な方だったのだが、そのほとんど全てに興味を失い、私生活はどんどん無味乾燥なものになっていった。だが、庭には多肉たちがいた。家族は世話の仕方など一切知らないから、私が面倒を見なければ、特にメセンなどは簡単に全滅するかもしれない。なので、命あるものを死なせたくない一心で、多肉の世話だけはなんとか続けてきた。

 多肉界ではご存じの方も多いと思うが、将来を嘱望された新進気鋭の作家であり、優れた多肉植物栽培者でもあった故・龍膽寺雄(りゅうたんじ・ゆう)氏は、筆禍事件(といっても内部告発的な意図の、勇気ある行動ではあったのだが)によって大御所の怒りを買ってしまった結果、最終的には文壇から追放されるに至った。要するに、真っ直ぐすぎる人だったのだろう。で、氏がその後に書いた多肉エッセーの中に、キーンと冷え切った夜の温室の中で一人、サボテンたちと向き合う龍膽寺氏の姿が出てくる。本来は荒涼とした砂漠にポツンと生えているであろうサボテンたちの姿に、文壇を追われて一匹狼となったものの、心の中には消しきれない炎を抱えている自分の姿を重ね合わせていたのだろう。私も、今よりもまだ悩み苦しんでいた頃、時々夜中に多肉置き場をしばし眺めていることがあった。龍膽寺氏のような派手な大立ち回りの経緯があるわけではなかったが、家族たちにも十分理解してもらえない中、多肉たちと向き合っていることや、このブログを皆さんに読んでもらえていることによって、ある種の安堵感というか、自分は(多肉たちも含めて)誰かの役に立てているのだということを感じ、それ以上心のバランスを崩さずに済んでいたのかもしれない。

 

 末筆ながら、読者の皆様に感謝すると共に、皆様と皆様の多肉たちのご多幸をお祈りさせていただきたい。